「爆弾で家の側面が吹き飛ばされています」、とウルフは一枚の写真を説明する。確かに都市は肉体で成り立ってはいない。だが抉り取られた建物は路上の死体と同じほど雄弁である(カブール、サラエヴォ、東モスター、グロズヌイ、二〇〇一年九月十一日のあとのロアーマンハッタンの一六エイカー、ジェニンの難民キャンプ)。ごらんなさい、と写真は言う。こんなふうなのですよ。戦争はこういうことをするのですよ。それにあの写真の、ああいうことも、あれも戦争がすることです。戦争は引き裂き、引きちぎる。戦争は抉りとる。戦争は焼き、解体し、滅ぼし尽くす。
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――スーザン・ソンタグ,『他者の苦痛へのまなざし』,みすず書房,2003年(北條文緒訳)
※引用部の太字は,原文では傍点。続きを読む