2005年01月20日

mandated refugees

mandateという単語がある。

それを辞書で見てみる。ここではオンラインで参照可能なものとして,Gooにある三省堂EXCEEDを見る。
mandate
_
━━ n. 命令(書), 指令(書); (普通単数形で) 権限委託; 【史】委任統治(領); (法王からの)聖職叙任命令, (選挙区民から議員にだす)要求.
━━ vt. 統治を委任する; 権限を付与する; 要求する; 委任統治領にする.


どうにも不十分だ。あてられている日本語が,中途半端に抽象的であるか,あるいは逆に用途が限定されているために,語としてのイメージがつかみづらい。

dictionary.comを見てみる。
mandate
_
n.
1. An authoritative command or instruction.
2. A command or an authorization given by a political electorate to its representative.
3.
i. A commission from the League of Nations authorizing a member nation to administer a territory.
ii. A region under such administration.
4. Law.
i. An order issued by a superior court or an official to a lower court.
ii. A contract by which one party agrees to perform services for another without payment.
_
tr.v.
1. To assign (a colony or territory) to a specified nation under a mandate.
2. To make mandatory, as by law; decree or require: mandated desegregation of public schools.


語意をより明晰にするために,mandatoryも見ておこう。
mandatory
_
adj.
1. Required or commanded by authority; obligatory: Attendance at the meeting is mandatory.
2. Of, having the nature of, or containing a mandate.
3. Holding a League of Nations mandate over a territory.


1つ目に注目してほしい。オーソリティによる「義務」「必須」ということである。つまり,「法的責任」とか「法的義務」ということだ。

mandateの動詞の語義2つめにも,as by lawというフレーズがあることに注目されたい。

すなわち,mandateとは,うまい表現ではないが,「ある法のもとにおける義務」を表す。(「委任統治」のうちmandateの意味を示す文字は,おそらく「任」だけであろう。)こんなことでこんなにだらだら書いている。私自身,mandateを「委任統治」として“暗記”したことが,mandateという語との出会いだった。そして,その「委任統治」という“暗記”が,いかにその後の私の理解を妨げたことか。この語は,英語を読む上でいちいち日本語にしてはならないということを教えてくれた語のひとつ,とも言える。

閑話休題。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のサイトを見てみる。

http://www.unhcr.or.jp/protect/role_j.html
# 同じページに英語の原文が併記されている。
・政府による、難民を特定する一義的な責任
_
日本が1951年難民条約を施行した1982年より、UNHCRは庇護希望者に対して、彼らはこの国の司法権の管轄下にあるため、政府からの保護を受ける為には所定の国内法に従わなければならないということを強調している。庇護希望者が、難民を認定する国内の管轄官庁、つまり法務省に申請を提出する前に UNHCR事務所を訪れた際は、UNHCRは常に入国管理局事務所に行くよう案内している。UNHCRでは、申請者が庇護申請をするために入国管理局に赴いたことを示さない限り、通常申請者の面接を行なわない。
_
〈1段落割愛〉
_
〈1文省略〉
_
・UNマンデイト難民と援助対象者(POC)の定義
_
国際連合は、1951年難民条約の締約国内外を問わず、世界各地の難民に保護を提供する主務当局として高等弁務官を指定している。マンデイト難民はUNHCRの事務所規程のもとに認定された者である。日本において、UNHCRが「マンデイト難民」若しくは「UN難民」と称した場合、通常、1951年難民条約第1条に類似した、UNHCR事務所規程第6条における迫害の十分に理由のある恐怖を有する人物のことである。
_
日本政府やその他の関係者と協議をする実質的な目的で、また特定の個人に発行した証明書において、UNHCRでは、国内及び国際紛争や大規模な人権侵害状況から避難してきた人々、若しくは無国籍の人々を「UNHCRの援助対象者(POC−Persons of concern to UNHCR)」と称している。これは、UNHCRが(タリバン政権崩壊以前のアフガン人や紛争が広汎化した時点でのコソボ人たちのように)彼らの国々の状況に対して客観的な分析を行なった後、または特定の事案に対する個別の審査の後になされるものである。
_
広義においては、「援助対象者」は全てのマンデイト難民をはじめ、UNHCRが職務上正当な関心を寄せる他の範疇の人々(庇護希望者、帰還民、国内避難民、無国籍者、戦争避難民)を含む包括的な定義であることを注記しておかなければならない。政府に難民申請をした庇護希望者(多くの人々は後にUNHCRの援助対象ではないと判断されている)に対してのUNHCRの役割、そして日本固有の状況(帰還民、国内避難民共になし)という点において混乱を避けるため、 UNHCRでは証明書を発行する際、若しくは個人の代理として仲介する際に「POC」をこのような広義において使用することを差し控えている。
なお、日本の難民申請手続中の申請者の代理としてUNHCRが仲介を行なう際には、UNHCRは常に彼らを「庇護希望者」と呼んでいる。


やや長い引用になったが,「マンデイト難民」という語,およびその定義についてを引用した。

persons of concern to UNHCRは「援助対象者」,asylum seekersは「庇護希望者」と翻訳されている一方で,「マンデイト難民」というカタカナは非常に目立つ。それは現代の日常の日本語に定着している「外来語」ですらない。

この数日,NHKの番組をめぐる問題に隠れるかのようにして,より重大なニュースがひっそり伝えられている。そのニュースに,mandateという語が関連している。関連してはいるが,私は自分がたまたま見た,この件についての数少ないテレビニュースの中で,「マンデイト難民」という用語を聞いた記憶が,ない。

もういちど,「マンデイト難民」の定義の部分だけを抜き出しておこう。

日本において、UNHCRが「マンデイト難民」若しくは「UN難民」と称した場合、通常、1951年難民条約第1条に類似した、UNHCR事務所規程第6条における迫害の十分に理由のある恐怖を有する人物のことである。


かみくだいて書けば,「マンデイト難民」とは,UNHCRが,法的根拠により迫害の危険を“認定”した人たちのこと,である。UNHCRが「この人は難民である。貴国は難民条約により,この人を保護しなければならない(mandate;obligation)」と,“認定”した人々のことである。

そしてそれは,1951年難民条約(条文)――国際法(参考)に拠る“認定”である。

そういう人たちを,日本国政府は,「超過滞在者」として国外退去処分・強制送還した。1月18日のことだ。

マンデイト難民の,state of originへの強制送還は,前例がない。日本が前例を作った。

UNHCRは18日付けで次のようなプレスリリースを出している。((AP記事にごく短く要約されている。)
UNHCR CONCERNED OVER UNPRECEDENTED REFUGEE DEPORTATION
http://www.unhcr.or.jp/news/press/pr050118.html
_
18 January 2005
_
TOKYO, 18 Jan. - The UN refugee agency, UNHCR, is deeply concerned over Japan's unprecedented deportation of two Turkish Kurds recognized as refugees under UNHCR's Statute. Japanese authorities deported the two refugees to Turkey on Tuesday, Jan. 18, despite last-minute appeals by UNHCR and human rights groups.
_
In a note verbale sent earlier Tuesday to the Minister of Justice, UNHCR urged the government not to send back these refugees, pointing out that such a move would represent an act of "refoulement" prohibited under international refugee law.
_
UNHCR said it had taken steps to seek third country resettlement for the refugees. The persons deported are a Turkish Kurd and his 20 year-old son. His wife and three other children are facing the same fate. UNHCR considers the deportation contrary to Japan's obligations under international law. The deportation is unprecedented and contrasts with Japan's humanitarian assistance towards refugees and disaster victims abroad.
_
The two persons deported had exhausted all legal remedies to remain in Japan and were considered as refugees by UNHCR. The refugee agency had made previous interventions on their behalf.
_
Until now, the Japanese authorities have provided UNHCR with the possibility to seek durable solutions for such refugees, including local integration or, in some cases, third country resettlement in accordance with the refugee agency's mandate. The "refoulement" of these refugees represents a disturbing departure from that practice.


# "refoulement"については「ノン・ルフールマン」でウェブ検索を。

日本国政府がトルコに「強制送還」した「超過滞在者」のクルド人(繰り返しになるが,彼らはUNHCRが“認定”した「難民」である。なお,「超過滞在」という違法行為は,日本国籍を有していれば,犯すことができない),カザンキラン父子がどうなるか,わからない。そして,今日本にいるカザンキラン父子の家族の人たち――同じく「マンデイト難民」/「超過滞在者」――の「強制送還」が,現実の恐怖(terror / horror)である。

法秩序とは何か。

ほんとマジで,ふざけてんの?って感じ。

……。

……。

せめて知るだけでも。国際法に対する,法秩序に対する,この醜悪な……私の言いたいことを表す言葉が見つからない。

-----------------------------------------------------------
難民条約についての美麗パンフレット(外務省)

------------------------------------------------------------
TBSウェブサイトより,映像ニュース:「強制送還されたクルド人がトルコ到着」(2005年01月20日(木) 18時51分)
# いつまで映像が見られるかはわかりません。とても短いものです。
posted by nofrills at 23:32| 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。