2006年05月18日

「下の下」――Ballymena少年襲撃殺人(3)

マイケル・マッカルヴィーン葬儀は、「プロテスタントもカトリックもない、バリミーナという場所全体の事件」であるということを示しはしたが、これはおとぎ話ではないので、これで対立が終わって“みんな”が仲良くなったりしない。

葬儀に参列した人の車が教会から出て行くときに、車に向かって、石を投げるという愚行をするロイヤリストがいたという(ガーディアンBBC)。Slugger O'Tooleではこれを「下の下(Lowest of the low)」というタイトルで報じているsectarian divideというものがどういうものか、少し考えてみたいときに、このスラオさん記事のコメント欄を読むといいかもしれない。「そんなことをするとは、まったくひどい連中だ」といったコメントもあるが、「わざわざ記事立てるようなこととは思えないのだが」とか「驚くべきことか?」といったコメントが、それも決して皮肉とか揶揄ではないものが、いくつもある。

sectarian divideがどこまで深いものなのか、言い換えればどこまでが「当たり前(normal)」で、特に書くほどのものとは認められないと考えられているのか、非常にリアル……というか、それそのものだ。

その中で、ひとつのやり取りを抜粋させてもらう。

If a black youth was murdered in the same manner and racists attacked the funeral I doubt we would be talking about a divided society but about evil people. And rightly so. ...
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▼これに対するレス
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Obviously the murder is the most serious thing, by far. The throwing of stones are nothing compared to that. And I agree with your point about how we would speak of it in a racist context somewhere else. That was a very constructive point, perhaps suggesting that we are all too fond of reverting to the symbolism of an event as more important than the consideration of their individual responsibility.
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However, while the murder is admittedly much more serious, I think in this incident we can see more clearly the level of sectarianism from which this murder came. I mean, in any other context, sure... people may kill someone b/c [=because] of their colour of their skin. But would they bother to come delibrately to the funeral to 'spit of the coffin'? No, they are evil people and they wouldn't care enough to do it. Likewise, the murder itself probably meant very little to them. What's another person's life to an evil person?
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Yet here they proudly come out to do this. To me, this is clear proof of 'racial superiority', that they feel it legitimate to do this. They feel that it will be well-received by many who hear of it, and so feel themselves 'making a point', as opposed to it just being the reckless acts of a hateful heart. So, in a sense, the symbolism of these stones being thrown at passing cars (at the funeral) is inescapable.
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This is symbolic, and it provides a portent into a divided society. They are NOT just the acts of a few evil individuals... to say that is to give immunity to the many in our society who, while having the wit not to 'dirty their hands' themselves, nevertheless stoke the flames of this already hellish community, and give the impramatur to those lacking in such wit and intelligence.


要約すれば、「人種差別主義者に殺された黒人の葬儀を人種差別主義者が襲撃したとする。その場合に問題とされるのは『社会の分断』ではなく『悪い人間』[ママ]だろう」というコメントに対して、「殺人に比べれば投石などどうということではないし、この事件には人種差別のコンテクストもある。個々の責任を問う前に事件のシンボリズムを見たがるのは確かに問題とすべきだろう。しかし、この投石事件は、マイケルの殺害の根となったセクタリアニズムがいかに深刻かを示すものだと思う。人種差別での殺人の場合、殺した側がわざわざ葬儀に来て、殺された側を侮辱していくだろうか? この投石はそういう話だ。しかも自慢げにそういうことをする。『ハクがつく』とか『意味のあることだ』と考えているのだから。こういったシンボリズムの作用する場では、単に幾人かの個人の行動だとは言っていられない。そう言っていると、ある程度は頭が回るから自分では手を汚さない連中に目を向けることがなく終わってしまう」というレスがついている。

なお、この長文レスを書いた人はここで頭が高速に回転し始めたのだろう、「子供を育てたお母さん」である閲覧者からの「あんた明日試験だって言ってたじゃないの、そろそろ勉強に戻りなさい」という制止も振り切って、このあと「極右な奴」に成りすました何者かとずいぶんやりあったらしい。(「らしい」というのは、削除されているのでやり取りがわからないからだ。成りすまされたのはわりと常連のロイヤリズム支持者。)

コメント欄はあと、前の論争(宗教をめぐるもの)の続きになってしまうが、「あのスレでは充実した議論ができた」「この話題ならみんなで話せるのでは」というように収束する。

また、「宗派別の学校を禁止すべき、全部integrated schoolにすべき」という意見に対しては、「学校が問題なんじゃない、家が問題だ」というレスがつけられている。

さて、セクタリアン・ディヴァイドについてはここまで。

この先はもっと泥沼かもしれない領域。

スラオさんのコメント欄@May 18, 2006 06:26 AMより、投石したバカどもは、"kill the fenians"と叫んでいたという。ただし「投石があった」という証言も「"kill the fenians"と叫んでいた」という証言も、現場にいたシン・フェインのカウンシラーによるものであるということで、コメント欄は「投石があったという事実でさえ疑わしい」という方向に一気に傾く。(コメント欄では1人が「"mobs"が"a stone"を投げた」なんておかしいと指摘しているが、これはライティングの段階のミスの可能性もあるのでわからない。ガーディアンではstonesと複数形である。)

ああ、またか。。。もう情報戦はついてくの疲れるからいやん。

ただ、まったくありもしないことを「あった」と言うほど、シン・フェインは愚かではないと思うけどね。

元々スラオさんが記事を立てたのは、UTV(Ulster TV:ITV系)でやっていたからだそうだけど、とりあえず、ガーディアンによると「警察が調査している」です。

※the Fenians =「フェニアン団」のことだが、こういう使い方をする場合は単に「カトリック」と考えてよい。(というか現場では、放送&印刷禁止用語の「カトリック」の蔑称が使われていたかもしれない。)「フェニアン団」は19世紀に結成されたアイルランド独立ゲリラ同盟。のちのIRBの前身。IRBはさらにのちにIRAになり、1969年にそのIRAについての「本家争い」が発生し、やたら活発だった分家(Provisional IRA)が本家より有名になって、今に至る……前に、まずはINLAが分派して、それからRIRAとCIRAも分派した。

なお、この殺人がロイヤリストによって賞賛されていることは、15日付ベルファスト・テレグラフが伝えている通り。
posted by nofrills at 21:27| todays_news_from_uk/northern_ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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