2003年12月30日

イラクの人のblog

勝手に言語の壁を取り払うプロジェクト第2弾。(第1弾が終わってないのに始めるのは基本が常に「思いつき」だから。)ただし言語の壁を取り払う際にどうしても出てくる意味のズレとかニュアンスの違いとかはカンベンしてください。

※翻訳許可についてはメールを送ってあります。(「翻訳がダメなら返事ください。OKなら放置ということで」と書きました。なので返事次第ではひょっとするとこのコーナーは突然消去されるかもしれません。1月始めに「翻訳許可」のお返事をいただきました。ので継続します。出典:
http://afamilyinbaghdad.blogspot.com/
バグダッドの家族が綴るblog(3兄弟とママによる)。兄弟は英語で,ママはアラビア語で書いています(いくつかは英語に翻訳されている)。私はアラビア語はわかんないので,英語になってるもののみ読みました。

このblogの家族の中にいるRaedさんは,Salam Paxさんが探していたRaedさんです。(←話がわからない方は,まあ適当にググるなどしてみてください。)

以下は完全な訳ではありません。抄訳です。文体とかも考えてません。英語が読める人はご自分の目でお読みになられるのがよいでしょう。
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■12月22日:投稿者=3兄弟のKさん
イラクで起きていることはとにかくおかしいんだ。みんなサダムが大好きで体制とバース党にも満足してた。ほとんどみんなが党の大会に出てた。それが翌日には……戦争後の大学でなんだけど,ここ4年間見てきたのと同じ顔ぶれなんだよね,もちろん。でもおかしいのは,みんなの意見がころっと変わってるわけだ。ある人は反体制でサダム大嫌いだったことが判明。っていうかほとんどの人がそうなんだが。んで,まだサダムのことが好きで弁護する人もいる。

一番すごいのは,例のドクター……党の集まりを仕切ってたあの人なんだけど……そのドクターが今や,サダムが排除されたことについていかに幸せに思うべきかをとうとうと話すわけだ。

サダムが拘束された日,僕は教室に入る時に何を言ったらいいのかわかんなくて。で言ったわけだ「アッサラーム・アレイクム」……フツーに「こんにちは」なんだけど……でみながこっちを見た。だから僕は言った。「喜んでいるみなさん,おめでとーございます。悲しんでいるみなさん,お気の毒さまです。」一応笑いを取りにいったんだけど……どっちからも嫌われたらしい(笑)。

サダムはね……僕がこの星で嫌いなごく少数の人のひとりです。それでも,「彼ら」の手に挟まれているサダムを見た時に思ったのは……うれしい……じゃなかった……CIAのみなさんを喜ばせるようなことが言えない自分なわけですが,僕は兵士のみなさんを花を持って出迎えたわけじゃないんでね。サダムの拘束でもうれしいとか思わなかった。

どうしてか,わかる?

多分ね,僕らはサダムのことが嫌いだったけど,サダムは僕らをめちゃくちゃにしてくれたけど,僕らの経済も生活も,宗教さえもめちゃめちゃにしてくれたけど,それでも,サダムはアメリカのお先棒を担いでない数少ない人間のひとりだった。つまり,悪魔(アメリカ人のみなさん,ごめんなさい,あなたがたへの恨みとかはありません。あなたがたの政府のことです)に対してNOと言った,数少ない人間のひとりだったんだ。だから僕は悲しかったんだと思う。悪い奴らが勝ったんだから。

「敵の敵は味方」と言う。それがここで起きたことじゃないかと僕は思う。

「敵」っていうのは,残念だけど事実そうなんだ。あなたがた(米国)の政策が,彼らを(そして時にはあなたを)敵の立場に追いやる。そうでしょ?

僕はアメリカの人たちが好きなんです。最近……戦争中とか戦争後にたくさんの外国の人に会って,昔だったら考えられないことだったわけだけど。ヨーロッパの人,アメリカの人,東の方の人,西の方の人……一緒に仕事をした人たちもいるし,友達になった人もたくさんいる。今でも友達は増えている。

で,僕の人間の行動観察が変なのだろうけど,なんか別の種を見てるみたいな気がするんだよね。別の種類の生活。イラクやアラブの人を見てても。こうやって僕は明確に考えることができる。黙って観察して判断する。前もって用意された判断は避ける。

その過程を経て,わかったんだけど……笑わないでね……僕たちみんな人間なんだ!同じ夢を持ち,同じ希望を持ち,同じ野心を持つ。笑う,泣く,子供を育てたいと思う,平和を欲する,幸せになりたいと思う,愛し愛されたいと思う。そうでしょ?そうだと言って,お願い。

というわけで,僕が……ごく普通の21歳,オトコ,バグダッド在住。バグダットにインターネットと呼ばれる新発明が入ってきたのはつい最近で,たいがいの人は携帯電話もクレジットカードも生まれてこの方見たこともないし,ビッグマックのことなんか聞いたこともない。それを僕が見られるのなら,人類史上最も発達した政府の「ひとつ」がそれを見られないってのはどういうこと?

あーもしもしそこのあなた,あなたにお話しているんですが。

僕たちの生活は質素だった。日常生活に必要なものは手に入ったし安かった。治安も問題じゃなかった。朝の3時に車で帰宅しても安心だった。政治の話題はご法度っていう世界だった。それはほんと。サダムを非難すれば殺された。それもほんと。でも少なくとも,僕らには生活があった。検問所で米兵に侮辱されることを心配しなくてもあちこちに行けた。

僕は今,「彼ら」が僕を間違って殺すんじゃないかとびくびくしている。家族の誰かがそういう目に会うんじゃないかとびくびくしている。彼らが前触れもなくうちに押し入って,誰かとか何かを探すといってあれこれ壊したり盗ったりするんじゃないかとびくびくしている。

アメリカ人の批判は,こわくてできない。だってブレマーは,占領に対して反感をかき立てるようなことを行った場合には攻撃とみなすとか何とかいう法律を作ったんだ。

家に帰るのがこわい。だって家には電気もないし暗いし寒い。ヘコむ。まさかと思うかもしれないけど,前はこんなじゃなかった。生活があった。低速でローテクな生活かもしれないけど,みなさんのおかげでね,生活はあったんだ。でも今は……ない。
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■12月24日:投稿者=お母さん(アラビア語→英語は翻訳済み)
私はバグダッドで生まれ,ずっと長いことバグダッドに住んできました。15年ほど離れていた時期がありますが……1976年に大学を出て結婚してバグダッドを離れましたが,(91年の)湾岸戦争の後に夫と3人の子供を連れて戻ってきました。

私はいかなる政治運動にも参加したことがないし,政党にも参加したことはありません。参加してしまうと,自分で決定することのできない奴隷のようなものになってしまうと感じられてならなくて。

特に第三世界では,人々は政治的経験を健全な形で自然に積んでいないので。党への忠誠が党員個人やその親戚や友人の利益につながって腐敗したりします。

(湾岸戦争の後に)バグダッドに戻ってみると,老いも若きも男性も女性も,自分の意思であるいは自分の意思に反して,バース党員になっていました。そのことを誇らしげに語り,自分の利益のために何かをすることを何とも思ってない人もいた。逆にバース党員になったことを恥じて言い訳を探す人もいた。

強い者が弱い者を食っていました。弱い者も,より弱い者や計算高くない人々を利用していました。

私はサダムが好きではなかった。サダムを称えたことは一度もなかった。一度私の店にウダイ・フセインだったか,内務大臣だったかの使いの人が買い物にきたことがありますが,ものすごく気が重かったです。立とうともせず,言葉も出ずでした。こんな客の相手をするのはいやだったのです。偽善者にはなりたくなかったし,彼らとなれなれしくなりすぎるのもいやだった。もし彼らの気に入らないことを言いでもしたら大変なことになるだろうし。

大統領の誕生日など,お祝い事となると,店のドアを若い人がノックして,大統領のお誕生日のお祝いの新聞広告を出したいので寄付を,とか,お祝いの式典のための寄付を,と言います。ゆすりです。でも誰が断れます?新聞はおべんちゃらを並べて大統領を称える詩であふれかえる。

今ではイラクには100の新聞がありますが,政党の御用新聞もあれば独立した新聞もあります。以前からジャーナリズムの世界にいた人々を使っている新聞もあります。

昨日までは拍手喝采し,嘘をつき,口先だけの美辞麗句を並べて生活していた人々が,今日は悪口雑言を並べ,笑いのネタにし,罵ります。

なぜこのようなことを?生活するためですか?それとも長年鬱積した不満を吐き出しているのですか?

特権待遇を得るために偽善者ナンバーワンを競っていたような人々が,この大きな変化に最も適応している。彼らには原則も信用もないからできるのです。利己的で権力者とお金の奴隷,信用できません。

私は混乱しています。これらの人々はサダムのせいで腐敗したのか,それともこれがいつものやり方なのか?

気分が重いです。頭が痛みます。

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■12月24日:投稿者=3兄弟のKさん
こんにちは。2つだけちょっと言いたくて。

まず,僕らは携帯を持ってるけど,周りには他には持ってる人はいないんです。っていうか生まれてこの方,携帯電話なんか見たこともないっていう人がほとんどです。

それと,あなたの国の大統領が「超大国」(もしくは「悪魔」)に身柄を捕えられて,他人に鼻とかをいじくられているのがテレビで写される。あなたならどんな気分がしますか。たとえあなたが大統領のことを憎んでいても。
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■12月25日:投稿者=3兄弟のKさん
米国の女性からメールをもらった。誠実な人柄が伝わってきた。

ここ(バグダッド)にいる兵士たちに個人的にどう思うもこう思うもない。もちろん,米国にいる米国人市民に対しても,反感などない。大部分の人は本心から手伝いたかったのだろうし,イラクとイラク人のためになることをしたかったんだということはまったく疑っていない。

しかし,ホワイトハウスとかでスーツを着てでっかい机で仕事をしている人々はどうか。彼らには誠実さはない。

一言言わせてください。あなたが見るもののなかで信じていいのは半分だけ。聞くものは一切信じられません。

ある人は「最近マスコミ報道は見てない」と言います。「もし見たら,何も信じるなと言いたくなるだろうし,ジャーナリストなど殺してしまえと言いたくなる。」

ちょっと考えてみてください。(【訳注:ここらへんは,おそらく米国の人に向けて書かれている】)

例えばロシアがあなたの国を占領して,あなたの国の全土を破壊したとする。市民を殺し,クラスター爆弾を使い,化学兵器を使い(まさかと思うかもしれないけれど,僕は死体の写真を見たんだ【訳注:劣化ウラン弾かもしれないね】),家を破壊し,行政システムをめちゃくちゃにした。警察署も消防署も空港も,何でもかんでもめちゃくちゃにした。それから,新しいテレビ局と新聞とラジオを作り,自由にしてやったんだから感謝しろと言う。で,あなたの国の大統領の顔をいじくり回してるのをテレビで写すんだ。(あなたが大統領を好きでも嫌いでもどっちでも大した違いはない。)どんな気分だか考えてみたことがありますか。

今度は目を閉じてください。窓から外を見て,視界に入るものすべてが破壊されていると想像してください。あなたが好きな場所もすべて,爆撃されたか略奪にあったか。あなたの愛する人もすべて死んだか負傷している。その上,とても寒いんです。電気もなくガソリンもなく。

では目を開けてください。

兵士やその家族がやさしい人であったとしても,それで何かが変わりますか?

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■追記:
↑において,私は言語の移し替えと多少の枝葉のカットはしましたが,自分の解釈は【注】以外には入れていません。

そのうえで……私たちはこれを読む時にKさんの21歳という年齢を考えなければならないということを書いておきます。湾岸戦争が91年なので,Kさんが9歳の時のことです。彼にサダム・フセインがどう見えていたのかは本人が書いています。

一方で,英国のマスメディア(インディペンデント紙)の記事ですが,Robert Fiskの28日記事,これはぞっとします。まあまあ読みやすいので是非。
Hooded Men Executing Saddam Officials
http://www.informationclearinghouse.info/article5432.htm

つまり,「サダムは舞台からいなくなった→だからサダムはもう殺すことができない」,話はここで終わりではなく(ここで終わりということにしたがっているのが米英),「サダムを批判していた者たちが,サダム支持者を私的に処刑している」「誰がバース党員を処刑しているのか,もうわからない」そして「英米はそれを止めようとしていない」(「テロリスト同士の殺し合い」にしておくのでしょう)。

ジャック・ストローの「サダムをあのままにしておくより,武力行使でサダムをひきずり下ろした方が,犠牲者の数は少なかった」が,嘘も嘘,どでかい嘘であることを改めて思います。結局は国内(英国内)向けの説明,飾りとしての大義名分です。スターリンが対日宣戦の理由として領土を与えられたようなものでしょう。
posted by nofrills at 09:07| voices_from_iraq | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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