2005年10月24日

無事に故郷に戻ったガーディアン記者。

バグダードのサドルシティで取材を終えたところで拉致され、36時間後に無事に解放されたガーディアン記者についての記事は、ガーディアンおよびBBCで、一通り、リアルタイムで読んできた。いろいろと磨耗している感じなので、特に書くべきことが見つからず、読むだけ読んだが何も書かなかった。

その記者さんが、無事に故郷に戻られたとのことで、「こんなことあった」という備忘録を兼ねて、メモのような記事。

Carroll welcomed back after ordeal
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/4370250.stm記者はガーディアンの所属なので、むろんガーディアンの記事の方が中身が濃いのだが、英語の読みやすさでBBC記事にリンクすることにした。

この記者のRory Carrollさんの最近の記事リンク集@ガーディアン:
http://www.guardian.co.uk/rorycarroll/story/0,,1596906,00.html

ガーディアンの特設ページ:
http://www.guardian.co.uk/rorycarroll

彼は9月に「ジャーナリストが危険にさらされている」という記事を書いていて、その記事の末尾に、途方もなくリアルなshoot-to-killのありさまが現れていて、私はその記事を紹介しようと思っていたのだが、いろいろ忙しくて流れて(流して)しまっていた。

というか、彼はガーディアンのバグダード特派員なので、ガーディアンはできうる限り毎日チェックしている私は、彼の記事はこれまでいくつか目を通してきた。

イラクではジャーナリストがたくさん殺されている。米軍による、いわゆる「誤射」の類、あるいは「誤射」なのかどうかがわからない射殺も少なくないが、誰が何のために殺しているのかわからないケースも多い。(バスラでのSteven Vincent殺害、Fakher Haider殺害が特に記憶に新しいが、バスラは英軍の工作員の件の舞台となった場所でもあり、英米のメディアのバスラについての記事はどう読むべきなのか、判断が難しいと私は思う。)

拉致されたジャーナリストの一覧:
http://www.cpj.org/Briefings/Iraq/iraq_abducted.html
(解放された人も殺された人も。。。ってか Scott Taylorってこの本の人だよね。←この本はコソヴォ、セルビアと、コソヴォ解放軍まわりの取材をまとめた本。2415円の価値は十二分にある。うわー、この人もイラクで拉致されてたのか。今知った。)

というわけで、ガーディアン記者が拉致された、ということを知ったときに……とてもいやな話だが、「最悪の結末」を予想することに自分の中で何の無理もなかった。

現実は、彼は無事に解放されたわけで、その「解放劇」の背景は不明だが、とにかく殺されなかったことには素直に安堵した。

ともあれ……Rory Carrollさんは英国の新聞の記者だが、国籍はアイルランドである。ダブリンで生まれ育ってトリニティ・カレッジを出ている。1997年にNorthern Ireland young journalist of the yearを受賞し、99年にガーディアンに入り、ローマに配属。 バルカンからのレポートなどがガーディアンのサイトにある(記者の名前で検索)。2002年に南アフリカ特派員となり、イラクには9ヶ月の予定で派遣されていた。

アイルランドは中立国で(第二次大戦でも中立……とはいえ、「反英」ゆえにいろいろあったのだが)、今回の「イラク戦争」でもむろん中立。EUの一員で通貨はユーロだが、NATOには入っていない。それでも、国内の軍事基地を米軍に使わせるなどしてはいる。

非常に残念なことに殺されてしまったマーガレット・ハッサンさんもアイルランド国籍を有していて、その点からアイルランド政府や政治家が何度も解放を呼びかけていた。また、同じく殺害されたケン・ビグリーさんは、イングランド生まれの英国人だったが、母親がアイルランド人だったので、拉致された後にアイルランド国籍も与えられて、その点からアイルランドが熱心に解放を呼びかけていた。しかし、2人とも無残に殺された。

そういう前例があったから、殺すことに意味があると考えられている場合は、アイリッシュだろうがブリティッシュだろうが殺されるのではないか、ましてやキャロルさんは英国の新聞の記者で、拉致されたのはサドルシティ、つまりシーア派でも現政権の主流とは別の系統で、その別の系統はバスラでも活発になってきているようだから、彼の拉致はバスラと関係していただろう――バスラと英国。。。

結果的には、これはすべて杞憂だったわけだが。

さて、BBCの、妙に明るい感じの記事にこんな一節がある。アイルランドに到着したキャロル氏の記者会見の内容をまとめた記事だ。

He thought his captors believed he was British.
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So he repeatedly stressed his Irish citizenship, telling the armed men about U2, Enya, the IRA, even a soap opera on Irish TV; and he drew a diagram of Europe, exaggerating the distance between Britain and Ireland.
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There was laughter amongst gathered journalists at this.


つまり、彼を拉致した人々は、彼のことを英国人だと思っていたに違いないと考えて、彼はU2やエンヤやIRAやアイルランドのテレビの連ドラの話をしたり、ブリテンとアイルランドの間の距離を拡大した欧州の地図をかいたりして、自分はアイルランド人であるということを繰り返し強調した。記者会見の席上ではここで笑いが起きた、とのこと。

U2やエンヤや連ドラ(<連ドラの話をされても相手にはわからないと思うが)はどうでもいいが、IRAについて何をどう話したのかが非常に気になる。「英国の帝国主義に対して戦ったフリーダム・ファイター」とか言ったんだろうか。

ワタシ的には、あれやこれやでシニシズムに押しつぶされそうな状態がずっと続いている。度が過ぎた発言に見えたらどうかご容赦ください。

しかしこんな情報↓があれば、シニカルにならない方が無理と私は思うのですよ。

 ロイター通信は、英軍が駐留するイラク南部でイラク人2人が保釈された後にキャロル記者が解放されたようだとする英政府筋の話を紹介している。(時事通信記事より)


そういえば、バスラで拉致された後に解放された英国人ジャーナリストにはJames Brandonさんという人がいます(昨年8月のteanotwar記事)。

ブランドンさんについては、David Endersの著書の最後の章を参照。(Endersの本は、読み物としてはおもしろいと思います。ただ、これ読んだからって、イラクについて何がわかるという本かというと……ってところです。米軍エンベッドではなく、それでも米軍の兵士と普通に話ができる20代前半のアメリカ人の「僕の見たイラク戦争」系体験記。彼はBaghdad Bulletinという英字紙をバグダードで立ち上げてしばらく奮闘した後に廃刊させた人ですが、現在もバグダードのグリーンゾーンの中で記事を書いているはずです。)

David Enders, "Baghdad Bulletin: Dispatches On The American Occupation"
posted by nofrills at 13:25| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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