2005年03月04日

5年前のある事件。

寝しなにガーディアンをチェックしていて,Asian youth 'murdered for officers' pleasure'(アジア人の少年は「係官の楽しみのために殺害された」)という見出しを見て,ちょうど5年前,私がロンドンに滞在していたときにそういう事件があった,と思い出した。英国を離れる直前に起きた事件で,東京に戻ってからネットでロンドンの新聞でその後の記事を読んだものだ。

ガーディアンの記事を読んだらその事件のことだった。

http://society.guardian.co.uk/youthjustice/story/
0,11982,1429811,00.html
Asianというのは,英国においては,the British Empireが植民地支配していた「アジア」を指すときに用いられる――すなわち英領インド(のちのインド,パキスタン,バングラディシュ)つまりインド亜大陸。あるいはSouth Asia(南アジア)という言い方も,あるロンドンの人がしていた。

さて,記事の内容:
An Asian teenager was murdered by a white racist after they were placed in the same cell as part of a game to fulfil the "perverted pleasure" of prison officers, a public inquiry heard today.


上記は記事の書き出しのパラグラフなので,ちょっとわかりづらい。prisonというのはyoung offender institution,すなわち「少年院」のことである。

2000年3月,西ロンドンの少年院(Feltham Young Offender Institution)で,19歳のZahid Mubarekが,同じ部屋のRobert Stewartによって殺された。

Zahid MubarekはAsian,Robert Stewartは白人で暴力的な人種差別主義者(字数が多いので以下便宜的に「ネオナチ」と表記する)だった。

Robert Stewartは殺人罪で有罪となり,終身刑の判決を下され,服役している。24歳になったそうだ。

しかし,通常ネオナチと有色人種とを同じ部屋に入れることはない。

そんなことがなぜ起きたのかが,2005年3月のパブリック・インクワイアリで語られた,というのがガーディアンの記事なのだが,まさに「ハァ?」である。
because warders at Feltham Young Offender Institution in west London "thought it would be funny to see what would happen when they put a young Asian lad in with someone who wanted to kill Asians."


事件の起きた少年院の看守らは「アジア系の少年と,アジア人をぶっ殺したがっているネオナチを一緒にしたら何が起きるかを見ることは,おもしろい(funny)と考えた」,だからZahidはRobertと同じ部屋に入れられた,という。

この記述は,元々はある職員の内部告発だ。2004年5月,ひとりの職員が匿名で,Commission for Racial Equalityに電話をした。労働組合では何もしないだろうと思ってCREに電話をしたのだという。

その後11月にパブリック・インクワイアリが開かれることになり,そのインクワイアリでの職員の証言が,当該のガーディアン記事になっているのだが……。

内部告発をした職員によると,この少年院では,少年同士をケンカさせて看守が賭けをするという“ゲーム”があって(しかも「グラディエイター」とか「コロシアム」と呼ばれていたという),それをやらせていたのが,Nigel Herring, the chairman of the Feltham branch of the POA (=Prison Officers' Association) at the time ――刑務所職員連合のフェルタム支部長。

白人と黒人を同じ部屋に,体の大きな者と小さな者を同じ部屋にいれて暴力が発生するのを見ては「おもしろい(funny)」と言い,げらげらと笑っていた,という。

この職員の告発に基づいて警察の捜査が行なわれたが,立件はされなかった。

2004年7月の警察の聴取で,職員は捜査担当者に対し“ゲーム”がエスカレートして殺してしまえということになったのだと思うと語ったが,Zahid Mubarekの殺害と“ゲーム”の関係を直接立証する証拠はないと認めている。職員は,事件の発生した2000年にフェルタム少年院の責任者だったPOAのTom Robsonからこう聞いており,“ゲーム”のことは上層部職員の間ではよく知られていた,と述べている。

繰り返しになるけれど,ネオナチと有色人種を同じ空間に一定時間以上いさせるなどということは,普通ありえない。

インクワイアリでは,「Robert Stewartはサイコパスだったから」などというサイキアトリストの見解も示されているというが,ご冗談を。

なるほど加害者はサイコパスかもしれない。しかしそれ以前に,この男は額に十字架とRIPという文字を入れ墨してる。よほどの気持ちがなければこんな場所にこんな入れ墨はしない。被害者を殺したあとに壁に書いた落書きには,スワスティカが書き込まれている。

これでも「相手がどの人種でも起きていた事件です――なにしろサイコパスなのですから」と……加害者はネオナチじゃなくてむしろサイコパスなんですと言うのだろうか。

少年院の職員にはコントロール不可能な不幸な事件であったと?
posted by nofrills at 03:46| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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