2005年10月05日

Jim Gray射殺される

最近までUDA(ロイヤリストのパラミリタリー組織)のリーダーのひとりだったJim Grayが,火曜日(10月4日),自宅玄関で射殺された。

Former loyalist leader shot dead
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4310924.stm

Ulster loyalist shot dead on his doorstep
http://www.guardian.co.uk/gun/Story/0,2763,1585196,00.html

ガーディアン記事から:
Police said that the murder was unrelated to the feud between the Ulster Volunteer Force and the Loyalist Volunteer Force in which four people have been killed in recent months.
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Instead, there was immediate speculation that the killing could have been "housekeeping" by the UDA, many of who had grown sick of Gray's vanity and bullying style of command. It is thought that he might have been prepared to provide information on their paramilitary empire in return for a lighter sentence. His address was well known, and his bail conditions meant that he could not leave his house at night.
Jim Grayは仮釈放中で,ゆえに夜間に自宅から出ることができず,夜間に自宅玄関に応対に出て射殺された。

彼は今年3月にUDAから追放されており,今回の射殺はUDA内部の犯行と見られている。

Jim Grayは以前にも顔面を撃たれたことがある。(この件については,警察はLVFからの報復と見ている。BBC記事の末尾を参照。)

ガーディアン記事から引用した部分にあるように,Jim Grayは組織内で嫌われていたのだが,その理由は,ガーディアンやBBCの記事では「服装も態度も派手だった」(実際,髪をブリーチして日焼けしてピンクのセーターを着たりしていたそうですが)ことで,組織内部であいつは我慢ならないという空気になっていた,というようなことで説明されている。

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ガーディアンでは,今回のJim Gray殺害事件の記事は,Northern Irelandのカテではなく,「英国の銃犯罪」のカテに入れられている。セクタリアン・ヴァイオレンスではなく,テロリズムでもなく,銃犯罪という扱い。

報道記事の「UDA内部の犯行と見られる」という記述が意味することは,
1)今年ものすごい勢いで激化したロイヤリスト組織間の争い(特にUDA/UFFとLVFとの襲撃合戦)とは関係ない
2)リパブリカンによる犯行ではない (I think the government and/or PSNI would have said "The weapons of the IRA have all gone, for good, as you know.")

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ロイヤリストのパラミリタリー組織はいくつもあり,それらの名称はアルファベット・スープ(笑)状態。主なものだけで,UDA/UFF(看板が違うだけで中身は同じ),LVF,UVFの3組織。3組織いずれも「停戦」しているが,UVFについてはつい最近公式に英国政府から「停戦状態にあるとは認められない」とのステートメントが出たばかり。また,このUVFは武器の放棄を拒否している。(余談ですが,現在はPUPという地域政党のリーダーになっているDavid Ervineは元UVFメンバーで,80年ごろに自動車爆弾を運転してるところを逮捕されて実刑判決で服役。その後実業家としてある程度成功し,政治家になったのだけど,この人がグッド・フライデー合意を推し進めたユニオニスト/ロイヤリスト側の政治家のひとり。1999年のBBC記事を読むと,「元テロリスト,現政治家」の考えを知ることができます。)

彼らの「敵」はリパブリカンのパラミリタリー組織(またアルファベット・スープになりますが,リパブリカン側にはIRAとINLAという大きな組織があり,IRAはPIRAとRIRAとCIRAに分派していて,先日武器を捨てたのはPIRA)であり,またそういった組織には属していなくてもアイリッシュ・ナショナリズムの考えを持つ人たち,つまりユナイテッド・アイルランドを目指す人たち,すなわち「カトリック系」が「敵」となり,さらにロイヤリスト側の組織間対立があり,という状態。

ロイヤリスト組織間の対立・抗争では,特に今年夏は,UDAとLVFの対立が激化,死者4名。(UDAとLVFの対立にはある程度政治的なバックグラウンドがあるのかもしれないけれども,「シマをめぐる争い」に近いらしい? 新聞記事でしか知る方法がないので,正確なところはよくわかりませんが。)

パラミリタリーというと,軍から流れてきた(あるいはどっかから密輸された)機関銃やら何やらを持った黒いバラクラバの男たちが森で訓練……というような感じですが,現在のNIの場合,むしろ,麻薬密売とか銃密売とかいった「組織犯罪」がニュースねたになることが多く,しかしそれら組織は同時に「政治的な動機が背後にあるもの」でもあり……。

UDAとは何かについてはwikipediaを参照。
http://en.wikipedia.org/wiki/Ulster_Defence_Association

孫引きで,Wikipediaに引用されているCAINデータベースの内容:
According to the Sutton database of deaths at the University of Ulster's CAIN project, the UDA was responsible for 112 killings during the Troubles. 78 of its victims were civilians, 29 were other loyalist paramilitaries (including 22 of its own members), 3 were members of the security forces and just two were republican paramilitaries.


つまり,UDAが行なった112件の殺人のうち,リパブリカンのパラミリタリー組織(IRAとかINLAとか)のメンバーの殺害は2件,残り110件のうち,78件が民間人殺害(カトリックの民間人がほとんどだったと思う),29件がロイヤリストのパラミリタリー組織メンバーの殺害(うち22件は自分たちの組織のメンバー),3件は英国の治安部隊(軍&RUC)の殺害。

つまり,UDAの血なまぐさい活動は,外部の敵(「カトリック」)だけでなく,内部の敵も多く,標的としてきた。(これはIRAでもあったことではある。)

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Jim Grayという重要人物が,仮釈放中で夜は自宅から出られないという状況で,どうしてガンマンが玄関ドアをノックできたのかはわかりません。UDAは組織内部での暗殺が非常に頻繁で,口封じとかの可能性は常にある。警察がはり付いてないとは考えづらいと思いますが。。。しかもこれまでにも暗殺されそうになったことのある人物,本人が警戒していなかったとも思われないし。

Jim Grayと同じく,UDAの元幹部で組織から追放されてイングランドに逃げたJohnny Adair(別名「狂犬」)は,イングランドの現住所付近でそんなに重大ではない事件を起こして逮捕→釈放→直後に妻を殴って逮捕というように,ずっと警察のご厄介になっているようです。

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なお,UDAは,英国のネオナチ過激派集団と関係があり(具体的には,英国のその集団のメンバーがUDAに来ている),またその集団は英国の某国家機関の工作活動で作られたという説もあり,という感じ。

っていうかほんとにこのアルファベット・スープは何とかならんのでしょうか。。。ロイヤリストの政党(UUP,DUP,PUP)も含めると,わけわかりません。

CAINにあるまとめを印刷してトイレに貼っておけば暗記できるかもしれないんですが。
http://cain.ulst.ac.uk/issues/violence/paramilitary.htm

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そうそう,UDAのリーダー(何人かいる)といえばこちらさんたち,最新記事は今年9月半ばの記事かなぁ。
http://www.sundaylife.co.uk/news/story.jsp?story=662081
↑ベルファスト・テレグラフなので,基本的にロイヤリスト側を向いて書かれた記事です。(NI関連の報道のほとんどすべてに言えることですが,メディアの「立場」や「主張」と,「事実」の区別をつけながら読まなければならない。)

ブレア側近のジョナサン・パウエルがUDA幹部との話し合いを行なったが,NIOが反対している,というのが大筋でしょうか。

Jackie McDonald and Andre Shoukri were among the UDA bosses who met Mr Powell, the PM's chief-of-staff, earlier this year.
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The Downing Street initiative was aimed at bringing an end to UDA activity, while the terror group's leaders demanded a package to promote prosperity in loyalist areas.
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UDA sources said that the first meeting with Mr Powell, in Belfast last February, went well.


……もともと「わかりやすい」話ではなさそうです。
posted by nofrills at 18:49| todays_news_from_uk/northern_ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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