2005年09月30日

東京とロンドン,物価比較

Tokyo shakes off tag as the most expensive city
By Colin Joyce
(Filed: 24/09/2005)
http://www.portal.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2005/09/24/wwide24.xml

These days it is Japanese who come back with horror stories about prices in Britain.
「大戸屋の定食が£4」とかいうことが書かれていて,このテレグラフの記事は「東京の実情」を伝える読み物記事としては,情報は的確だと思う。

ただし,都心で風呂なし・台所なしで家賃が月に40000円というアパートは,そんなにぽこぽこ見つかるわけでもないが。。。それにしたって,ロンドンで週£50とか60の部屋を探すよりは簡単かもしれない。(ただし東京の場合は保証人とか敷金礼金の問題が必ずある。)

また,この記事は読み物としてはよいのだが,「平均的な英国人は£4000の借金。平均的な日本の世帯は£50000の貯金」とか,「狭いアパートのために,読み終わった本は古書店に持ち込む習慣が定着した」といった記述のために,“読み物”を超えるものではなくなっている。

ま,東京とロンドンの物価のことを言うなら,税金(日本の消費税と英国の付加価値税)の違いがあるし(英国では,基本的な生活物資は非課税だから食材は安い。一方で外食すれば17.5%の付加価値税が上乗せされる),安い輸入品のこともある(ロンドンだとmade in Greeceとかmade in Spainが,東京のmade in Taiwanとかmade in Singaporeに近かった――made in Chinaは今ではグローバルだと思うし,大量生産品のmade in GreeceとかSpainとかは表示ではmade in EUになってるはずだが)。このテレグラフ記事は,どう読んでも,そこまで扱おうとしている記事ではないし,それを前提として,読者に何を伝えるかという点で的は外してないと思う。

なお,ロンドンで週£50の部屋を見つけたとしても,外食すれば1食につき必ず£5〜8はかかる。設備があって自炊ができればロンドンでもそこそこ安く暮らせるが(拙著はそれが前提),都心の40000円物件のような設備で「安く,体を壊さずに暮らす」ことは,ロンドンではほぼ不可能だろう。

「東京は物価が高いから,どっかよその国で割安に生活をしたい。でも先進国希望」という場合は,ロンドンは,北欧諸都市と同様,選択肢にはならない。(英国でも地方都市ならロンドンほど高くはないが,それでも東京と比べて割安になるかっていうと,ならないと思う。)

-------------------------

新聞記事になるような「物価の国際比較」では,東京が世界一,ロンドンは5位か6位(2位から4位または5位には北欧の首都とかニューヨークが入っている)というようなことがよくあると思うのだが,普通に生活してく上では,ロンドンの方が東京より高い。

もちろん,ロンドンの方が東京より安いものもある。代表例としては,大量生産の食パン。比較にならないほど価格差がある。(英国の人が東京のスーパーで1斤180円の食パンを見てショックを受けていた。)「本場の」ミュージカルとかはロンドンの方が安いし(「本場」はクルーの移動費もかからないし当然である),博物館&美術館に至っては,国立のものは,特別展を除いては入場無料。

しかし,英国ならお金を使わずに豊かな生活が楽しめる,なんてのは日本における幻想と願望でしかない。というか,「英国人がさしてお金を使わずにやってることを,日本人も豊かだと思いましょう」という主張じゃなかろうか。「イギリスは“豊か”である」という仮説を立てて,それを立証していく試みだとしたら,それに意味がないとは言わないが,そうであったとしても,それは〈事実〉ではない。

〈事実〉は,マトモに書けるペンが100円=£0.50では買えないのが英国だし,ペン先がひっかかったりせずに裏に文字が透けずに書けるノート/メモ帳が100円では買えないのが英国。£1で買った書き心地の良くないペンが,インクはあるのに突然書けなくなってるときに,「豊かさ」も「ゆとり」も何もありゃしないわけで。(「いちいち怒ってたらやってられないから怒らない」を「ゆとり」と呼ぶのでない限りは。)

閑話休題。

住居費や宿泊費は外すとして(ピンからキリまで差がありすぎて,「平均」の意味があるかどうかわかんないから),普通に住んで暮らしていくには,ロンドンの方が東京より確実に高い。

例えば,東京では高くても680円とか780円で食べられるような内容の何の変哲もないようなランチが,ロンドンでは£5.00超えちゃう(£1はだいたい200円で両替)。付け加えるに,東京で食うより不味い。それが2000年の話。なお,ロンドンでのこの外食費の高さは,17.5%の付加価値税のせいでもある。(外食は,サンドイッチでも何でも課税対象となる。)

交通費だって,東京では私鉄とJRと地下鉄を乗り継ぐたびに初乗り料金が確実にかかり(英国の地方都市から東京に来た人はそれでショックを受けていた),実際,かつてはロンドンの方が割安だったのだが(£1=250円のレートのころ),ロンドンの公共交通機関の毎年恒例のような値上げの結果,そうとはいえなくなってきた。

ロンドンでは現在,zone 1内の料金は£2.00,zone 1からzone 2にまたがる場合の料金は£2.30(→料金表)。複数のロンドン在住日本人から,「日本食を買うときは£1=100円を換算レートにしないと気が狂う」という話を聞いたが,交通費も実勢の半分(逆から見れば倍)のレートで換算しないと頭が変になる。(ちなみに,2000年にはzone 1 and 2で£1.80だったと記憶している。)

いや,ロンドンの公共交通機関はトラベルカード(日本で言う「1日乗車券」)を使えば安いという話もあるが,1 day travelcardは現在,zone 1 - 6(グレイター・ロンドン全域,つまりヒースロー空港からロンドン中心部をカバー)は,朝のピーク時間帯(9:30まで)も使えるものは£12.00,ピーク時間帯は使えないものでも£6.00もする。それぞれ,だいたい2400円,1200円という計算になる。zone 6というとかなり遠くまで行けそうな気がするがそうでもない。都心の鉄道駅(ウォータールー)からzone 6のハンプトン・コート駅までは30分ちょっとだ。

そんな広範囲じゃなく,もうちょっと現実的な範囲ということで,例えばカムデンタウンとかハイベリーとかブリクストンとかから都心という場合……ゾーンとしてはzone 1とzone 2で,この場合のトラベルカードは,ピークが£6.00,オフピークが£4.70。(トラベルカードの詳細については料金表を参照。zoneについてはマップを参照。)

一方で東京の場合,都電・都バス・都営地下鉄が1日乗り放題の「1日乗車券」が700円,都営地下鉄と旧営団地下鉄(東京メトロ)の「1日乗車券」が1000円。都電・都バス・都営地下鉄、東京メトロ、都区内のJR線の「1日乗車券」は1580円。(いずれも大人料金。参考。)

ロンドンのトラベルカードの場合,あえて東京で言えば「都電・都バス・都営地下鉄、東京メトロ、都区内のJR線」のタイプ(東京では私鉄は別料金であるが)。かつ「都区内」は大まかに見てロンドンで言えばzone 2ということになるから,東京の全公共交通機関乗り放題1日1580円よりは,ロンドンのzone 1 and 2の乗り放題1日£6.00(おおまかに1200円)の方が安いといえば安いが,実際に東京において,都電・都バス・都営地下鉄、東京メトロ、都区内のJR線の1日乗車券はよほどじゃなければ使わない。一方でロンドンでは,普通の切符があまりに高いから(かつ,地下鉄が突然ストップしたり行き先を変更したりしてバスを使うことになったりすらするから),トラベルカードを買った方がよいという可能性が高い。

というわけで,実際どうよという話になると,あまり比較の対象にならない。ややこしくなってきたなあ。。。

ともかく,ロンドンのzone 1 and 2は(初乗りでも)£2.30,すなわち往復だと£4.60。トラベルカードなら£6.00,9:30以降だけに動くなら£4.70。

無理やり置き換えてみると,例えば荻窪から新宿に出るのが,JRを使おうが地下鉄を使おうが,片道460円で往復は920円という感じ。「今日は荻窪から新宿に出た後に上野にも行く」という場合には,片道を何度も買うより安上がりになる「1日乗車券」を使うのが割安で,それが,朝のピーク時間帯も使いたいなら1200円,9:30以降に出歩くという場合なら940円。

ただし,荻窪から新宿(JRのみ,または地下鉄のみ)でも,自由が丘から新宿(私鉄とJR)でも,あるいは浅草から新宿(地下鉄とJR)でも料金が同じ,というのがロンドンのzone制のシステムだから,一概にどっちが高いという比較はできないかもしれない。それでも,絶対量として,電車に乗って移動するためにサイフから出て行く金は,ロンドンの方が多い。

ちなみに,荻窪から新宿は,JRなら160円,地下鉄(丸の内線)なら190円。自由が丘から新宿は東横線とJRで300円。浅草から新宿は都営地下鉄とJRで330円。(以上,路線情報で調べた結果。)

……という具合。

----------------------------

さて,テレグラフ記事に「東京の狂乱物価はバブルの時代の話」という一節がある。記事に出ている「狂乱物価」は,バブル時代としても例外的なもの(というかあまりにバブリーなもの)で,普通の生活とはあんまり関係のない嗜好品だが(ああいうものは今でもああいう値段だと思うよ),普通の生活をするのでも,当時は今よりずっと高かった。例えば,デザイン面で特に何もしてないような実用バッグ(現在なら,安めの雑貨店で税込み1050円で買えるようなトートバッグの類)が3900円という感じ。2000年代に「(まがりなりにも)うどんが100円(税別)で食える」とかいうことは,当時,まったく想像すらしてなかった。

こういうことはある程度の時間をそこで暮らしてみないとなかなかわからないかもしれない。

それでも,バブル期を基準にした場合,今の東京は,まるでうそのように物価が安いという印象を受けるかもしれない。

バブルの時期,ふと気づくと「ちょこんと盛られたこじゃれたパスタ1皿が1000円」が当然になっていた。(ごく限られた身の回りでは,パスタ1皿でバイトの時給分以上が飛ぶんなら,パン屋でテキトーにパンでも買って,三鷹オスカー(3本立ての名画座。学生は700円か800円だった)でだらだらしてた方がおもしろいじゃん,ってことになってた。)そして,当時はどこに行ってもパスタなら1皿1000円とかで,選択の幅が狭かった。

一方で,今は1皿1200円のおパスタさまを選ぶこともできれば,1皿580円でまあまあのパスタが食える店を選ぶこともできる。

ずっと東京にいると,どうしてそういうことになったのかってことは,整った理論では説明できなくても,実感として知ってる。あの通りにあの店ができてからだよな,とかそんな感じで。

2003年,既に「日本は不況」というニュースが広く知られていたときに東京に来た英国人は,夜の新宿に出たときに,「不況なんてうそじゃないのか? 資源のない日本なのにこんなにネオンが明るくて,そこらじゅうで商品の宣伝をしている。英国が不況だったときのロンドンのウエストエンドはこんなに明るくなかった」と行った。

目の前にある看板の大半がサラ金のものだと告げると,その人は「なるほど,そういうことか。そりゃ不況だね」とうなづいた。

テレグラフ記事は100円ショップについての記述で締めくくられているが,10年前の1995年には,100円グッズといえば,専門のショップではなく,スーパーの催事場や貸し店舗などで臨時で設けられる程度で,「100円ショップ」はほとんどなかったと思う。

記事にある通り,英国版「100円ショップ」は「£1ショップ」で,そして100円ショップと同等の質か,あるいはもっと質の悪い雑貨が売られている。

「無印良品」はロンドンのショップで買うと日本での価格のおよそ2倍。

UNIQLOを見てみたら,日本で1990円のバッグは,UKでは£19.99……「£1=100円」レートでこれも2倍。(ただしUNIQLOの衣類は,見た感じ,「£1=200円」レートに近いっぽい。。。比較対照したわけではないです。)
posted by nofrills at 02:19| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。