2005年09月23日

BBCが取材にこない「政治的」な演劇。

数日前の記事だが,ロンドンのTricycle Theatreで上演中(10月8日まで)のBLOODY SUNDAY - SCENES FROM THE SAVILLE INQUIRYについて,ガーディアン記事。

Why isn't this shown on the BBC?
Monday September 19, 2005
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,2763,1573333,00.htmlBLOODY SUNDAY - SCENES FROM THE SAVILLE INQUIRYは,ガーディアンが関わっている――Media Partner: the Guardianであるばかりでなく,Edited by Richard Norton-Taylorだ。

リチャード・ノートン=テイラーはガーディアンの安全保障・軍事担当のエディターで,ゴールドスミス司法長官のゴーサインについての熱心な報道を行ったことが私の記憶には鮮明なのだが,2003年にはなんとあのハットン・インクワイアリ(2003年7月に「自殺体」で発見された国防省顧問=BBCの情報源のひとりの死の真相をめぐるインクワイアリ)を演劇にしていたとのこと。それは不覚にも知らなかった。

今回トライシクル・シアターで上演されている「ブラッディ・サンデー」は,1972年1月30日,デリー(ロンドンデリー)で起きた英軍による一般市民への銃撃事件(ブラッディ・サンデー)の真相究明のインクワイアリ(Saville Inquiry)を,演劇にしたもの。

# 真相究明ってったって,事件から30年くらい経ってからようやく始められたものである。事件直後のインクワイアリは,嘘ばっかりだったということが後に検証され,30年くらいもしてからようやくほんとの真相究明に着手されたわけだ。しかもこれは「英国内」なのに。

ガーディアンの記事は,この演劇はBBCテレビで取り上げられる手はずになっていたのに……というもの。月曜日の記事だから,改めてBBCのサイトを検索してみたのだけど,記事はないなあ。。。

Herein lies the source of the terror the Derry audience believes is still felt by powerful interests in Britain, including media interests, when confronted with a representation of the truth about Bloody Sunday.


A majority of people in Derry aren't waiting for Saville to tell them the truth, but to discover whether Saville will tell the truth to the world.


事件のあったデリーの人々が求めているのは,インクワイアリで彼らに対して真相が明らかになることではなく,インクワイアリが世界に対して真相を明らかにすることである――こんな端的に書かれると,かえってショッキングだ。

だって彼らは全部見ていた。教会に行く日曜日に,武器など持っていないデモ隊に装甲車が近づいて発砲した17分間,そこで起きたことを全部見ていた。近所のドハーティさんが撃たれて倒れ,助けようとして白いハンカチを白旗の代わりに掲げて歩み出たマクギガンさんが後頭部を狙撃されて倒れるのを見ていた。

そして国家から「そんなの嘘だ。軍はテロリストに撃たれたので反撃したのだ」と言われ続けてきた。国家はまた,同じことを世界に告げ続けていた。

Saville offered a bigger challenge politically: the truth about Bloody Sunday has to do not with institutional prejudice or administrative complicity in law-breaking, but with the direct, wilful murder of innocent unarmed civilians by uniformed representatives of the state.


制服を着用した国家の代表者によって,何もしていない非武装の一般市民が殺害された,それがブラッディ・サンデー事件である――なんてことを,30年以上も言い続けなければならない。

これはどこかの「政情不安な発展途上国」で起きたことではなく,英国で起きたこと。

72年のインクワイアリで「軍は撃たれたから反撃した」という“結論”になったときに,それを信じたイノセントな人たちがどのくらいいたことか。それがどのように「世論」に影響したか。どのくらい北アイルランドのTroublesの深刻化に関係したか――完全に正確なところは,もはや検証できないかもしれない。

And, as Kent pointed out, "We have Iraq now ... The soldiers there have to know that the law applies to them."


1972年1月30日のデリーとよく重ね合わせられるのが,2003年4月29日のファルージャ(非武装のデモ隊に,米軍が発砲,13人死亡)だ。
http://www.serve.com/pfc/misc/bogbasra.html

イラクの英軍で記者会見などでたびたび出てきた高官に,Sir Michael Jacksonという人がいる。彼はデリーでのデモ隊銃撃事件を起こした英軍パラ部隊の2番目の司令官だった。

マイケル・ジャクソン将軍のプロフィール:
http://news.bbc.co.uk/hi/english/static/kosovo_profiles/jackson.stm
↑KFORのトップをしてたときのプロフ。

http://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Jackson_(soldier)

1972年1月30日は,「過去」になってないのだと思う――30余年を経た今でも。

BLOODY SUNDAY - SCENES FROM THE SAVILLE INQUIRYは,ロンドンに来る前にデリーとベルファストで上演された。ロンドンの後はダブリンのAbbey Theatreで行われるDublin Theatre Festivalで上演されることになっている。
posted by nofrills at 19:20| todays_news_from_uk/northern_ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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