2004年05月28日

ブレアの火消しとprotect themselves

Yahoo! JAPANに出ていたロイターさんの「英首相、イラクの多国籍軍めぐる問題で米との相違を否定」についての記事をBBCで読みたくてBBCに行ったんですが,見事にアブ・ハムザ逮捕一色って感じですがな。アブ・ハムザ逮捕はわかるんですが,とっくに逮捕されてても不思議ではなかったわけで,なぜ今――と,自分の読みたい記事が見つけられないからイライラして陰謀論に傾いてみたりする。こんな当然至極のニュース,記事なんぞ読まんでも書いてあることは想像つくし(逮捕の事実関係のほかは,アブ・ハムザのこれまでの発言のまとめ,とかだろう),そーじゃなくて,ブレアがどーやって火消ししてるのかが私は知りたいぞ。上記ロイターさん記事は26日の日付だけど,その後どーなってるのか???これで「英米は亀裂なし」ってことになったのか???

ブレアの火消しってのは,6月30日以降の占領軍の軍事行動について,英国が「イラク側に拒否権あり」で米国が「拒否権なし」で割れちゃった,というのが大々的に報じられたことに,どう対処してるのか。ブレアがこう発言したってことは,個人の考えとかそういうレベルではなく,もっと高度な政治的決定なので,それが米国の外務(国務省)のレベルと食い違ったってことは,けっこう深刻なことだと私は思うのですよ。

ところで,「多国籍軍は米国の指揮下にとどまる」かどうかって話なんでしたっけ? 先週末から今週初めにかけてニュースまったく見てないのでわかんなくなっちゃってます。。。「多国籍軍」? 「連合軍」じゃなくて?

英首相、イラクの多国籍軍めぐる問題で米との相違を否定
 [ロンドン 26日 ロイター] ブレア英首相は、イラク主権移譲後の多国籍軍の指揮権問題について、多国籍軍は米国の指揮下にとどまると述べて、英米間に食い違いがあるとの見方を否定した。
 一方で、1年に及ぶ米主導のイラク占領の終結を望む同首相は、6月30日の主権移譲の受け皿となる暫定政権は、軍事的な戦略を含む「完全な主権」を有する、と強調し、イラク国民や国際世論への配慮も示した。
 同首相は前日、イラク国民は、最近のファルージャに対する攻撃のような作戦に対して拒否権を持つべきだ、との考えを示して米政府を驚かせ、パウエル米国務長官が、米軍は米国の指揮下にとどまる、と言明することにつながった。
 マスコミや野党政治家らが、イラク戦争以来初めて浮上した米英間の食い違いの兆候に矛先を向けるなか、同首相は、自らとブッシュ米大統領の間に見解の相違はない、と主張した。
 同首相は議会で、「われわれは、イラク国民に移譲される完全な主権が存在するべきであり、多国籍軍は米国の指揮下にとどまるべきである、ということで完全に合意している」とし、「究極の戦略的および政治的な決定は6月30日以降、イラク暫定政権が下す。一旦、戦略的な決定が下されれば、作戦の実行は、軍および軍司令官が責任を持つ」と語った。(ロイター)


「われわれは、イラク国民に移譲される完全な主権が存在するべきであり」の原文は下記。「べき」はshouldですね。「国家に主権が存在する」のは「べきである」かどうかではないってのは常識で一瞬わけわかんない日本語ですが,これは「there is 〜+分詞」を見れば,「完全な主権が移譲されねばならない」の意味だと(つまり,これまで言ってることと何ら違いはないのですが)わかります。

Blair denies Bush Iraq rift
Wed 26 May, 2004 14:41
http://www.reuters.co.uk/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=5262514
...
"We are both absolutely agreed there should be full sovereignty transferred to the Iraqi people and that the multinational force should remain under American command," he told parliament on Wednesday.


しかし,このshould,難しい。前もこういうshouldがわかんなくて,英語圏の文法相談室みたいなところに質問したんだけど,私が何を言っているのかが相手(米国の人)にわかってもらえなくて,結局わかんなかったことがあります。「〜ことになっている」(=be to do)か?

「ブッシュ大統領もわたくしも,完全な主権がイラクの人々に移譲されねばならないということでは合意しておりますし,多国籍軍は米軍指揮下に留まるということも合意しております」と首相は水曜日に国会で述べた……ってことだよね。???

まあいいや。それはさておき,日本語になってるロイター記事は,原文の半分くらいまでです。(追記:日本語になっているものは,私が見たのの1つ前に出された早版のようです。早版は同じ所で切れてます。多分。)原文の続き……なるほど,火消しはプレスコット(副首相)登場ですか。

There was "no question" of U.S. or British troops being under anything other than their own national command, he added.
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Clearly stung by a media storm in Britain, Blair sent Deputy Prime Minister John Prescott onto the airwaves earlier to label talk of an Anglo-American split "complete rubbish."
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TABOO ISSUE
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Prescott said the British and U.S. statements boiled down to two non-conflicting points: Iraqis having general political control over foreign troops, except when those troops were attacked.
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"Under circumstances which can occur where a terrorist attack takes place and attacks a military force, whether it's the Americans or the British, clearly they will be expected to defend themselves. Nobody doubts that," he said.
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The government line, however, still appeared to fall somewhat short of Washington's broader interpretation.
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Powell said on Tuesday the United States "would take into account" the Iraqis' view at political and military level.
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"Ultimately, however, if it comes down to the United States armed forces protecting themselves or in some way accomplishing their mission in a way that might not be in total consonance with what the Iraqi interim government might want to do at a particular moment in time, U.S. forces remain under U.S. command and will do what is necessary to protect themselves," he said.
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The charged issue of control over troops is crucial to convincing Iraqis -- and sceptical powers like France and Russia -- that London and Washington are serious about handing back sovereignty to Iraq. It also touches an American taboo over foreign control of its troops.
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A draft U.N. resolution presented by Washington and London to endorse the interim Iraqi government would allow U.S.-led forces to "take all measures" to keep order and does not contain a specific Iraqi veto clause. But British officials say such an effective veto would be included in an exchange of letters with the interim government and agreed before a U.N. vote.
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Some analysts speculated Britain's position may be an attempt to reassure other countries -- particularly in Europe -- over Iraq, or a response to calls from some at home for Blair to distance himself from Bush.
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Blair's alliance with Bush over Iraq has helped send his popularity ratings tumbling and set him up for a beating in upcoming June 30 local and European elections.
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But Rosemary Hollis, a Middle East expert at the Royal Institute of International Affairs, said she thought Blair's position was a genuine response to complications on the ground.
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"The whole period between now and the end of the year will be very messy," she added. "The U.S. has to let go of its desire to have everything streamlined and controlled, and accept mess."
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-- from Blair denies Bush Iraq rift
Wed 26 May, 2004 14:41
http://www.reuters.co.uk/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=5262514


protect themselvesというのが何度か出てくるけれど,例の「ブッシュ・ドクトリン」とか,イスラエルのやってること・言ってることとか見てると,do what is necessary to protect themselvesってのは,単に「自衛する」ではない。これが私たちの時代の「戦争」だと思う。「自衛」の名の下に,いろんなことが正当化されるのだ。

例えば,イスラエルが占領しているパレスチナでは,ここ2年くらいの間にこんなことが続いている。

パレスチナのテロリストから市民を守るために,家を破壊する。それを止めようと超大型ブルドーザーの前に立ちはだかる人間を,そのままひき殺す(レイチェル・コリー)。市民を守るために市民を殺していることをテレビカメラで撮影しているジャーナリストを狙撃して殺す(ジェイムズ・ミラー)。これも,究極的にはto protect themselvesを目的とする作戦なのだからと正当化された。

こんなことが続いている。それを説明しようという努力さえ,もう払われない。

ブレアはなぜ「イラクの政府に拒否権」を口にしたのか。どんなに小さな言葉であっても,それを口にしたことは事実。それはなぜか。米国との不一致があるのかないのかなんてことよりも,そっちの方が重要だ。そう言ったのがロビン・クックでもLibDemのケネディでもなく,ブレアであるがゆえに。

ブレアの発言内容:
"The people who will decide whether the troops stay or not will be the Iraqi government," said the prime minister, saying there would be a "full transfer of sovereignty".
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Mr Blair said the Iraqi government would have "final political control" on coalition military action - but nobody would be able to tell British troops to do things they did not want to do.
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/3745981.stm


ってか,そもそも,押しかけてきた外国の軍隊が,国家の意思(というものがあるとして)と無関係に勝手に作戦を展開するなんてことは,主権国家ではありえないわけで。ま,いやしくも「民主主義」を言うのであれば,事前に何らかの根回しをして「イラク政府がそれを望んでいる」形にするのだろうけれど,イラク政府が望まないことを占領軍(連合軍,多国籍軍,whatever)が「自衛」のためにできるとなると,もはやそういう根回しすらいらない,ってこと? 「自衛のため」に「テロリストの拠点」を「たたく」ことだってできるってことでしょ? イラクをパレスチナにしたい?

もうわけがわからない。

時系列整理をBBC記事で(単に英語が読みやすいから):
25日,ブレアが記者会見で「イラク暫定政権に拒否権」との発言
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/3745981.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/3745981.stm
26日,ブレアが「米国との相違」を否定
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/3748985.stm
↑そのものの記事が見当たらないので,政治解説記事
27日,英軍増派(370人)決定(スペイン軍など撤退を受けたものではない)
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/3752773.stm
複数ソースってことで簡単に見つかったロイターUK記事も

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なお,本日英メディア,BBCでポップアップで出てくる「今日の各紙1面」を見ると,スター(芸能情報紙)とFT(経済専門紙)を除いて,タイムズもガーディアンもインディペンデントも腐れ保守タブロイドSもデイリーエクスプレスでさえもアブ・ハムザ一色。(FTも小さな写真がありました。)一番すごかったのは……やはり腐れ保守タブロイドSでした。
posted by nofrills at 18:30| i_dont_think_i_am_a_pacifist/words_at_war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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