2006年03月22日

その「テロ」は誰の「テロ」?

英国で04年に爆弾テロ計画 検察指摘
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 【ロンドン22日共同】ロンドン警視庁が2004年3月に爆弾の材料となる硝酸アンモニウムの肥料約600キロを押収した事件の初公判が21日、ロンドン中央刑事裁判所であり、検察は冒頭陳述で、被告らが当時英国内で爆弾テロを計画し、爆弾製造に必要な材料をほぼ調達済みだったことを明らかにした。
 ……以下略……
(共同通信) - 3月22日9時9分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060322-00000034-kyodo-int
魚拓

「英国で04年に爆弾テロ計画 検察指摘」という見出しを見てクリックする人は、「誰の」爆弾テロ計画であると予想してクリックするんだろうか。私はこの記事の見出しを見たときに、ほんとに素で「を、Real IRAですね」と思ったんですが、そうじゃなかった。

正確には、「を、Real IRAですね」と思ってから1秒かそこらで「日本でRIRAの爆弾テロ計画がニュースになるわけないじゃん」と自分ツッコミを入れてから、記事を読み進め、RIRAのテロ計画の話などしていないということがわかったのだが。

しかし何で私は「を、Real IRAですね」なんて思ったんだろうか。これは「持病」なんだろうか?

別に「何かというとIRA」なアタマがあまりに頑固であるということではないと自分では思うが、実はそうなのかもしれない。三つ子の魂百まで、みたいなもんで。もっと言えば「また○○か!」の思考/思考停止パターンが染み付いている。

それと、日本での報道では「英国」は北アイルランドを含まないということは感覚的にわかってて、この「英国で04年に爆弾テロ計画」の「英国」は「ブリテン島」、もっといえば「イングランド」と読んでいるので、北アイルランドでRIRAがちょっとどんじゃかやってたからって、この記事が「北アイルランドにおける爆弾事件」についてのものではないということは、見出しを見た瞬間に把握している。

それでもなお、2006年3月に、「英国で04年に爆弾テロ計画」という文字列を見て、「を、Real IRAですね」と思ってしまったのには、多少は合理的な根拠らしきものもなくはないんだよね。

2004年はRIRA(Real IRA:報道に出てくる「IRA」ことPIRAから分派した過激派の中の過激派)が北アイルランドでちょっとどんじゃかやってた。これが、同じIRAを名乗る組織でもRIRAではなくPIRAだったら、そりゃもう大変なことでおじゃるのであるが、RIRAなら「そういうこともあるだろう」程度かもしれない。(なお、PIRAは昨年、武装闘争を停止すると宣言し、武器を使えない状態にしているが、RIRAはPIRAではなく、むしろ反PIRAのIRAで、今も活動中ではある。)

現に私は、「2004年3月にレディング駅でボム・スケア、IRAの爆弾」という記述を前に見ていて、その記述自体はどうも信憑性が薄いということが後でわかったのだが(過去記事の追記部分=年表を引用したすぐ下を参照)、何となく「そういうことがあったのかもしれない(最終的にニュース記事になるほどのものではなかったにせよ)」という気はしてた。時期的にも、2004年といえば2003年11月のアセンブリー選挙でユニオニスト過激派というか強硬派(DUP)が勝ったあとで、DUPがかなり威勢よく叫んでいたから、危機感に駆られた非主流派リパブリカン(=32カウンティ実現まで武装闘争継続派)、つまりRIRAがその時期に何かしらプロットを立ててたとしても、そういうこともあったのかも、という話だと思う。(それがRIRAじゃなくてPIRAだったらえらいことだが。)

だって2001年8月にはRIRAの爆弾はロンドンで爆発していたんだから。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/1056797.stm

2000年にはRIRAによるボム・スケアがあったんだから。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/840694.stm

ま、自分でもこの「あったのかもしれない」思考に引きずられすぎだと思う。(^^;)

IRA、IRAとうるさいようだが、私としては「IRAを糾弾せよ」とかいうわけでもない。そうじゃなくて、“「テロ」といえば「イスラミスト」”という図式が当たり前のように存在していることに強い違和感を抱いていて、かつ自分自身の経験として、イングランドでの「IRAの爆弾」をちょっとは知っているから、「英国」「テロ」とキーワードが2つ並べてあるだけで、「パキスタン系」とか「イスラム教徒」といったキーワードが読者の頭の中で連想されて当然である、といわんばかりの書き方がされているのを見ると、ううむと思う。

一度“「テロ」といえば「〜〜〜」”という連想のパターンが確立されてしまうと、その“「テロ」といえば「〜〜〜」”みたいな短絡で説明のつかないことに遭遇しない限りは、その他の可能性を考えることすらなくなってしまう。

※「“「テロ」といえば「〜〜〜」”みたいな短絡で説明のつかないこと」とは、例えば、SOHOのパブでのネイルボム襲撃(これは「テロ」なのか「犯罪」なのかよくわかんないのだけど、「政治的な動機」だったので「テロ」に分類されることが多いと思う)が、IRAではなくて極右のファナティックな男の凶行だったということなど。

なお、上記共同通信記事に出てくる「硝酸アンモニウムの肥料約600キロを押収した事件」とはこの事件だ。

Terror police probe 'bomb plot'
Last Updated: Wednesday, 31 March, 2004, 03:55 GMT 04:55 UK
http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/3584009.stm

西ロンドンのHanwellという町のBoston Roadの住居で、約半トンの硝酸アンモニウム(ammonium nitrate)が押収され、17歳から32歳のパキスタン系英国人の男性が逮捕され、取調べを受けている、という記事。

記事の説明によれば、硝酸アンモニウムは広く肥料として用いられるが、肥料程度の質のものでも爆弾製造は不可能ではなく、マドリードの爆弾でもバリの爆弾でも使われていて(それらの爆弾で用いられた硝酸アンモニウムの品質がどうなのかは記事ではわからないのだけれど)、1998年のナイロビの米大使館爆弾でも使われている。が、1995年のオクラホマ爆弾(ティモシー・マクベイ)でも使われていて、もちろんIRAの爆弾でも使われているから、硝酸アンモニウムというだけでアルカーイダの爆弾と考えるのは早計である、という書き方を、BBCは、一応してはいる。

ちなみに「英国で04年に爆弾テロ計画 検察指摘」(2006年3月、共同)の事柄についてのBBCの報道は:
'Terror plot' evidence outlined
Wednesday, 22 March 2006, 02:59 GMT
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/4831472.stm

結審まで5ヶ月とのことです。

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あとさ、「英国で04年に爆弾テロ計画 検察指摘」って、多分、「2005年7月に爆弾テロがあった英国で、04年にも爆弾テロが計画されていた」っていう意識があって出てくる言辞だよね。それもなー・・・「英国ではこれまで爆弾テロなどなかった」というんなら話はわかるけれども、イングランドではIRAがさんざんどかんどかんやってたんだから、すごい機械的に見れば、「英国で04年に爆弾テロ計画 検察指摘」と言われても、何ら新しい情報じゃないから、「だから?」になっちゃう(つまり、見出しを見てクリックしようとは思わない)。

内容的には、「ロンドン・04年の爆発物押収 公判開始」って感じかなあ。ちょい長すぎるけど。

あと、「IRAの爆弾」といえば、とにもかくにもこの記事は必読です。
http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-2092574,00.html

この記事に関することは後で別記事に。
posted by nofrills at 21:01| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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