2005年12月23日

「同性結婚」こと、Civil Partnership

エルトン・ジョン、ジョージ・マイケル(<予定)など著名人について、日本で「同性結婚」として報じられているCivil Partnershipを認める法律が成立したのは、2004年11月でした。

Civil Partnership Act 2004
http://www.opsi.gov.uk/acts/acts2004/20040033.htm

法案の国会提出時(2004年3月)のBBCの簡明な解説:
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/3585819.stm

Civil partnershipのcivilは、civil rights(公民権)のcivilと同じで「市民としての、公民としての」という意味であり、その内容は「男女で結婚している人々と同等の」ということで、具体的にはパートナー(配偶者)が死亡した場合の遺産相続の権利などがある、ということです。英国は「イングランド&ウェールズ」、「スコットランド」、「北アイルランド」の3つに分かれていますが、Civil Partnership Bill/Actはこれら3つすべてに効力を持つ法律です。「結婚」と日本語で伝えられているのは、役所での登録のことで、「婚姻届」に相当するものです。(ちなみに、「教会での結婚式」も英国にはもちろんありますが、「市役所での結婚式」もあります。civil ceremonyと呼ばれていると思います。)

条文より

Civil partnership
(1) A civil partnership is a relationship between two people of the same sex ("civil partners")-
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(a) which is formed when they register as civil partners of each other-
(i) in England or Wales (under Part 2),
(ii) in Scotland (under Part 3),
(iii) in Northern Ireland (under Part 4), or
(iv) outside the United Kingdom under an Order in Council made under Chapter 1 of Part 5 (registration at British consulates etc. or by armed forces personnel), or
_
(b) which they are treated under Chapter 2 of Part 5 as having formed (at the time determined under that Chapter) by virtue of having registered an overseas relationship.
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(2) Subsection (1) is subject to the provisions of this Act under or by virtue of which a civil partnership is void.
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(3) A civil partnership ends only on death, dissolution or annulment.
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(4) The references in subsection (3) to dissolution and annulment are to dissolution and annulment having effect under or recognised in accordance with this Act.
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(5) References in this Act to an overseas relationship are to be read in accordance with Chapter 2 of Part 5.


Civil Partnershipが認められるのは両者が同性の場合で(トランスジェンダーについてまでは私は調べることができていません)、一方が英国籍、もう一方が英国以外の国籍のときにどうなるのかについては、SCHEDULE 23, Section 249を参照してください。Spouse visaなどにも変更が生じてると思いますが、そこまで調べられていません。(イミグレ法も改定の審議の最中で、何がどう変わるのか調べるだけで手一杯で。)

BBCの記事(Magazine)、法律が発効する前に出たもの:
39 years of waiting
http://news.bbc.co.uk/1/hi/magazine/4497416.stm

イングランドの77歳と66歳のカップルの話。「39年待った」という。何年か前にひとりが入院したときの医師の反応(「患者さんのパートナー? ビジネスパートナーですか?」)が生々しいです。自分がこの医師だったらやはりそう反応したかもしれない、と思うし。。。私の場合、それは単に、このカップルの年齢のためなんだよね。こういうのをバイアスというんだろうな。

でね、このCivil Partnership Actのもとでの「結婚式」ですが、英国全体で最初に行なわれたのが、北アイルランドのベルファストでした。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/4540226.stm

ベルファストの市庁舎での手続き(式)を行なったのは、最初が女性同士のカップル、次が男性同士のカップル、その次が女性同士のカップル。

北アイルランドといえば「カトリック系住民とプロテスタント系住民の対立」、本当は宗教紛争ではないんですが(そもそも南北を分断させたのは宗教じゃなくて政治)、ここではその中身は置いておくとして、とにもかくにも北アイルランドは「カトリック」と「プロテスタント」です。

北アイルランドの「カトリック」は・・・カトリックですから・・・「中絶反対」とか。(ただし、男性の聖職者による、若年の同性を対象とした性的abuseが大問題になったりもしている。問題は同性ということではなく若年者に対するabuseということにあるんですが。)

一方の「プロテスタント」ですが、これは日本では「キリスト教原理主義」として知られている「ファンダメンタリズム」が勢力としては最大。アメリカの(エセ)福音派などについての話が日本にもちょくちょく入ってきているのでファンダメンタリズムについては特に付け加えるべきこともないと思いますが、あれはアメリカだけのことではありません。北アイルランドもああいう感じ。(「ハリケーン・カトリーナは頽廃文化への神の怒り」とかいう発言も北アイルランドでありました。←リンク先のコメント欄参照。)

北アイルランドのプロテスタントで最大の宗派は、統計を見ると「プレスビテリアン(長老派)」ですが、アメリカのプレスビテリアン(非常に「リベラル」)とは違って、ガチで保守的です。(さらに、イアン・ペイズリーが立ち上げた「フリー・プレスビテリアン」というNI独自の宗派もあり、そっちはもっとすごい。)「進化論は学校で教えるべきじゃない」とか、「男は外で働き、女は家庭を守る」とかいうのが標準。また、オリヴァー・クロムウェル(ピューリタンもプレスビテリアンもスコットランドのカルヴァン派です)の侵略戦争とか、ウィリアム3世の対カトリック王追放とかを礼賛(「戦勝記念日」の7月12日にオレンジマンがパレードする)、「カトリックはぶっ殺せ」というひどいスローガンが今も過去のものになってなかったりします。

ベルファストで8月に行なわれた「プライド」(<格闘技じゃなくてゲイ・パレード)では、「汚らわしいパレードに反対」という運動をファンダメンタリストが行なったりもしました(最終的に「プライド」は成功しました)。

そういう反対運動やっちゃうような人々には、今回のCivil Partnership Actでの「結婚」は、「絶対に許しません」なものであることは当然で、BBCによるとやはり、市庁舎前には抗議活動家が集結したそうです――40人くらいだったそうですが。

About 40 people staged a protest outside City Hall.
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The Reverend David McIlveen, of the Free Presbyterian Church - among the protesters - said he was "very much opposed" to the "marriage in all but name" of gay couples.
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The Bible described marriage as "a relationship between male and female for the bringing up of children", he told BBC News.
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"It is revealed as being an honourable relationship whereas the Bible speaks of same sex relationships as being an abomination. You cannot reconcile the two."
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-- http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/4540226.stm


BBC記事には、黄色に黒字でSINと書かれた大きなバナーとか、SODOMY IS SINと書かれたプラカードを持った人たちの写真が掲載されています。この人たちは、同じ性別の人たちが、異なる性別の人たちと同じように身体的関係を結ぶことをSODOMYとかSINと定義している、ということです。ミシェル・フーコー読み返したくなるなぁ。

なおスラオさんのFlickrサイト(setの中にセレモニーの様子が撮影されたものがありますが、とてもいい写真です)には、「許しません」な人たちだけでなく、サポーターもプラカードとレインボー旗を持って役所の前に立ってる写真があります。「許しません」な人たちのお召し物(背広にネクタイではない人たち)に注目。あと、うーん、Western Islandsでは「うちの地域では許しません」になってるらしい。。。(以上、情報源はスラオさん。)

ベルファストの状況については別の記事もあります。(記事の書き出しが「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては……」をもじったような表現になってます。)
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/4543142.stm

この記事↑から抜粋しますが:
Northern Ireland was the last place in the United Kingdom to decriminalise homosexuality and not everyone here welcomes being the first place in the United Kingdom to allow same-sex unions.


同性愛行為が「違法行為」であったのは何もオスカー・ワイルドの時代の話ではなく、それが「違法」でなくなったのはイングランド&ウェールズでは1967年、スコットランドでは1980年、北アイルランドでは1982年のこと。その後サッチャー政権下の1988年にSection 28ってのが作られて、「公立の機関は同性愛をアブノーマルではないものとして提示してはならない」とされた(これは「AIDSの恐怖」とマスコミの恐怖を煽る取り上げ方と、そして何より保守党政権、しかもサッチャーの相乗効果で生まれたようなもの)。Section 28が最終的にリピールされたのは2003年11月。

最後に、同性結婚に向けて活動してきたアクティヴィストのひとりであるアンドリュー・サリヴァン*1のブログの12月19日記事:
http://www.andrewsullivan.com/index.php?dish_inc=archives/...
IN BELFAST: The one thing that has always united the Catholics and Protestants of Northern Ireland - as is the case with many religious extremists - is hatred of gays. I remember during the UK tour for "Virtually Normal," the first book to argue for marriage rights as the central cause for the gay movement, that I was on a TV show in Northern Ireland. It was the first ever network show on gay issues in Northern Ireland ever, I was told. I was beamed in remotely. They asked ten gay men and women to come to give their side of the story. Only three turned up. The rest were that scared of the social consequences. Yesterday, the first civil marriage took place in Britain for two lesbians. In Belfast. Gay sex was a criminal offense in Ulster as recently as 1982.


*1:
アンドリュー・サリヴァン (Andrew Sullivan) は英国生まれで米国で活動しているライター/ブロガー。90年代半ばにThe New Republic(言論雑誌)の編集長をしていた彼は、「保守派」という形容詞で説明されることも多いのですが(実際、「対テロ戦争」とイラク戦争は支持)、保守派というより「リバタリアン」だろうな・・・「左派」ではないことは確かですが、いわゆる「ネオコン」的な「右派」でないことも確かです。個人的印象ですけど、この人はチャーチルがかなり好きなんだろうなあという気がします。最近は拷問をめぐる米国の態度に対して極めて批判的な長文記事を書いてたりしてますが(ブログの記事のほか、TNRの記事〔最初の1ページしか読めないけど〕も一読の価値あり。「アメリカ的価値観」の限界というか、それを信じるということの限界というか、ご都合主義的なところもあるんですが、問題意識が非常に明確)、それらを読むと何がこの人の根底にあるのかがはっきりわかると思います。この人はセクシャリティとしてはゲイで、15年以上にわたるgay rights activistで、HIV-Positiveであることを公にしていて、同性愛者の社会的な位置づけについての著作が複数あります。「ゲイ・ライツといえば左派」というのは1960年代以降の政治的な色づけだということもいろいろ書いています。
posted by nofrills at 02:16| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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