2005年07月30日

北アイルランドで戦った優秀な軍人のPTSD

マルコム・ニュー(Malcolm New)さん。ウェールズ出身。46歳。元英陸軍。the Royal Welch Fusiliersでstaff sergeantを勤め,the British Empire Medal を授与されたほどの優秀な軍人。

この人のPTSDが,軍での活動によるものと認められ,英国防省から62万ポンドの賠償金が支払われることになった。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/wales/4725455.stm
http://www.guardian.co.uk/uk_news/story/0,,1539268,00.htmlニューさんは1979年から94年にかけて,北アイルランドで軍務についていた。特に諜報活動に優れていた。

ニューさんは,「リーダーシップ」と「テロリストに対する断固たる姿勢」を評価され,1990年にはthe British Empire Medal を授与された。

しかし1989年に4度目の派遣がされたときには,ニューさんは異様な緊張状態にあったと同僚は述べている。

1993年,ひどい頭痛で医師の診察を受けたニューさんは「ストレス性の頭痛」と言われ,上官に「北アイルランドへは行きたくない」と語ったが,それでも派遣(5度目)された。

そしてそれから2ヶ月もたたないうちに,ニューさんは,ひどく頭痛がすると同僚たちに語っていた。

ほどなく,ニューさんは北アイルランドからイングランドに送り返された。意欲喪失と判断されてのことだった。

その3年後の97年,ようやく初めて精神科医の診察を受けたニューさんは,PTSDと診断された。

ニューさんの代理人は法廷で,MoDはニューさんが5度目の派遣から送り返されたときに精神科医の診察を受けさせるべきだったと主張,そしてそれが,彼の軍人としてのキャリアを短くしたと主張し,最終的にそれが認められ,今回のMoD敗訴・賠償支払いという法的結論となった。

一方,敗訴したMoD側は,ニューさんには元々精神疾患になるリスク・ファクターがあったのではないか(したがって,北アイルランドでの経験は彼の症状とは関係ない)と主張していた。

※ここまで,参考は今年5月のBBC記事および7月29日のBBC記事

フラッシュバックなどPTSDの症状が出る前のニューさんは,優秀な軍人だった。「その自分の影」(<判事の言葉)をつかまえるがごとく,2005年,ニューさんはイラクの民間警備会社(私営軍事企業)で仕事を始めたが――北アイルランド経験者で,イラクのPMCで「仕事をしている」人は少なくない。特に諜報関係やPara部隊――続かなかった。

ニューさんは北アイルランドで,10歳の少女が吹き飛ばされるところを目撃した。致命傷を負った同僚に人工呼吸をした――助からなかった。

※以上,参考は7月30日のガーディアン記事(by Richard Norton-Taylor)。以下も同じ。

また,ニューさんのほかに2名の元兵士への賠償金支払いが法廷で命じられている。

ひとりはメルヴィン・ウェストさん(35歳)。北アイルランドで,同僚が頭を撃たれるのを目撃したことがきっかけでPTSDとなった。ウェストさんのケースでも,MoDがウェストさんをすぐに専門の医師に見せなかったことは,義務に反するとの判断である。

別の匿名の元軍人は,ボスニアで,木にくくりつけられて腹を裂かれた妊婦を目撃した。

この2人への賠償額については,具体的な決定はまだ為されていない。

国防省は,これらの件では落ち度を認めたが,これらは「まったくisolatedな」事例であると述べている。(isolated=全体の問題ではなく,個別の問題,という意味。アブ・グレイブでの例の拷問が,「個々の兵士の責任」にされたのと同じような感じで。)
posted by nofrills at 20:46| i_dont_think_i_am_a_pacifist/words_at_war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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