2004年09月28日

四面楚歌の中,ブレアのニタニタ笑いはいつまで続くか?

というわけで,労働党の党大会真っ最中である。しかし私はくたびれ果てていてニュースを追っていない。終わってからでいいや,みたいな。

でも,「イラク戦争に反対する勢力が執行部側を押し切って」「最終日の30日にイラク問題をめぐる議決を行う」という話は,さすがにちょっと見ておきたいよーな気がしなくもない。Blair faces Iraq pull-out debate
Tom Happold in Brighton
Monday September 27, 2004
http://politics.guardian.co.uk/labour2004/story/
0,14991,1313872,00.html

#「首相にとっては厳しい事態」だとかいう新聞のクリシェを外して,概略だけを示す。それにしても,推敲不足なのかちょっと読みづらい記事である。
労働党党大会が行われているが,大会最終日の木曜日(30日)にイラクからの英軍の撤退期日を早く設定するよう求める声が党内から起きている。
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木曜日には,戦争に至った首相の指揮を批判する動議2件が提出され,それについての投票が,(各地域の労働党の)代表者によって行われることになっている。
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2件の動議のうちの1件では,イラク占領を「正当化しえないほどに破壊的(unjustifiably destructive)」としている。
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党としては今回の党大会の焦点を国内の「日常的」問題に絞りたい考えだったが,昨日(26日),各地域の党代表者がそれに異をとなえ,イラクについての緊急討論を行うことを決議した。

【ツッコミ】つまり,党としてはイラク問題は今回は触れずに済ませたかったが,各地域の代表がそれを許さなかった。
地域代表は10件の決議案を提出したが,それらは2件に要約された。


【ツッコミ】↑これ,かなり重要だと思うのですが。少なくとも,元の10件と提出されることになった2件は,見比べる必要がある。

党執行部は2件の動議から,即時撤退の要求を外すことに成功した。


【ツッコミ】つまり,オリジナルの案には「即時撤退」が含まれていた。それを取り下げた代わりに,「撤退期日を早い時期に定める」ことを求めたのだろう。

しかし,政府のイラク政策を深く批判した動議をお蔵入りにさせることはできなかった。
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その動議は,閣僚に対し,「イラク占領を続けることは,生命にとっても資源にとっても正当化しえぬほどに破壊的であると認識すること」を求め,また「早い時期の英軍撤退期日を決めることを首相に要求する」ものである。

【ツッコミ】讀賣記事にある「これ以上の占領は、イラクの生命と資源にとって壊滅的であり、首相に英軍の早期撤退の表明を求める」の「イラクの」はどっから出てきたかなあ? ガーディアン以外の記事も見ないと。(私は,これは文脈からして,英軍の犠牲者・英国人犠牲者のことだと思っている。resourceが具体的に何を指すのかも要検討。)→とりあえず,Independent記事を見つけるだけ見つけた。

党執行部はこの動議が通らないことを望んでおり,来年1月に予定されているイラクの選挙までは英軍はイラクに留まるという動議への支持を地域代表から取りつけることを望んでいる。


【ツッコミ】執行部も動議を用意してるってことか。

その動議では,選挙後に英軍は「なるべく速やかに,ただし新たに選挙されたイラク政府の希望があった場合にのみ」撤退する,とある。


【ツッコミ】結局は撤退しないってことじゃん。イラクの傀儡政権(このまま選挙になれば「民主的に選挙された」傀儡政権の誕生だ)が米英に撤退してくださいと言うはずがないし。っていうか,こういう条件はおうおうにしてdubiousなのだ。

(地域代表の提出した)動議は,開戦に至ったブレアの指揮をはっきりと批判しているが――ブレアに対し将来は「国連の枠組の中で」行動することを求めている――,ブレアが「よかれと思って行動した(acted in good faith)」ことは認めている。


【ツッコミ】ばかばかしい! ここにツッコミ入れずにどうするんだ! こんな中途半端な動議なら出さんでよろしい!! 「よかれと思っていた」から許される?わけないだろう。

2件の動議がどうなるかは,労組「ビッグ4」の行動にかかっている。【以下1パラグラフは省略】


私はシニカルなので,結局は来年5月の英総選挙での労働党への支持を減らしたくないってだけじゃないのか,と思う。死活問題だろうしね。政権が保守党に移ったら(LibDemはまだ政権を担えるほどではないようだ),労組とかはものすごい打撃をこうむることになる。

ともあれ,「イラクではうまくいってないんですが,労働党はそれだけじゃないんですよ」ってことを有権者に示そうとしてるのが執行部で,これはとても卑劣なことだ。(英国らしからぬ,というか,英国らしい,というかは,各人の「英国」のイメージに依存。)

一方,イラクは無視するにはでかすぎるという現実を知る人たちも党内にいて,その人たちが動議を提出している。むろん,彼らが本当に「ブレアの決断」を問うているということもあるだろう。

ってか,だったらブレアを何とかすれば? 党内で多数がブレアに反対しているのなら,ブレアは党首ではいられない。それがデモクラシーでしょ。

それなのに,党首としてのブレアを問うのではなく,イラクからの英軍の撤退を求める動議。お茶を濁してるだけじゃないの?

いや,実際にはそんな単純ではない。ドクター・ケリーの死の真相究明のインクワイアリを率いたwhitewashのハットン卿(サッチャー政権下でさんざん暴れた司法界の重鎮)を引っ張り出してきたのは,ブレアのふところ刀のピーター・マンデルソンだったというし,ブレアはとにかく退陣しなくて済むように,いろいろと画策してきた。

ということを割り引いてみても……結局は,選挙だな。(日本の自民党みたいなことになってる。というか,日本の自民党が英労働党みたいになってるのか? ま,実際ブレアは97年に「労働党をぶッ壊した」わけだし。)

来年5月(予定)の選挙を前に,ブレア側は驚天動地の人事(アラン・ミルバーン)でブレアの基盤を固めてかかってきた。その上で,イラクについては自分たちからは言及しないという卑怯なスタンスを取ってる。

一方ブレアとはちょっと「角福戦争」みたいな状態のゴードン・ブラウン(この人もニュー・レイバーだが)はどう動いているか。この人は自画自賛の演説をしたばかり(「英国の経済的繁栄は第2次大戦後未曾有のものであり」みたいなの)。一方でブレアとサシで話してかなりぎゃふんと言わせたらしい。(the Wrapからの情報。)

ほんで,裏にはブレアのスピンドクターたち(ピーター・マンデルソン,アラン・ミルバーン,その他)がいる。彼らはものすごく頭がよいので,ステキな台本を書いているはずだ。

さらに党内のオールド・レイバーたちは。

……みたいな話に過ぎない。(いやほんと,日本でのここ2ヶ月ほどの「郵政民営化」と自民党に似てるかもしれない。)

しかも現在イラクでは英国人が人質になっている。一緒に拉致された米国人2人はもう殺された。英国では人質になったケネス(ケン)・ビグリー氏の家族が必死の訴えを続けている。これはある種三面記事で非常にわかりやすいからいちいち日本語にはしない。(日本語で書いておくとすれば,政府が「自己責任ですからねぇ」とかほざいてないという事実だけ。)

労働党の反戦を主張する人々が「撤退を」と求めたということは,これ以上占領が長引けば,ビグリー氏のような目に遭う人がまだまだ出るから,ということもあるだろう。

一方,党執行部も「撤退? おとといおいで」みたいな対応をしたら,“テロリスト”を刺激してしまってビグリー氏殺害→英国内での労働党支持ますます低下→来年の選挙で確実に負ける,ということになるってことくらいはワーストケース・シナリオとして描いているだろう。

というわけで,この党大会での中途半端な動議ってやつは,いかにも政治めいて私には見える。

ところでビグリー氏の件については,24日付けのthe Wrapにこんな記述があった。タイムズ(右翼新聞)の記事のまとめだ。
"Iraq officials were at one point ready to release the woman on bail. Britain and America will not allow this," says Simon Jenkins, who
accuses Tony Blair of double standards in his approach to terrorism in Iraq and Northern Ireland. "Mr Blair has already freed dozens of convicted IRA killers in the hope that his gesture might encourage the Provisionals to disband," he writes in the Times.


つまり,the Wrapによるこの記述を読む限りでは,タイムズ記者は,ブレアはNIに関しては,武装勢力(=IRA)が解散するのではないかと見こんで,有罪となったテロリストたちをがんがん釈放している。一方でイラクに関しては逆のことをしている。これはダブルスタンダードである,と言っている。

内容はゴミみたいなものだが(ためにする議論でしかない),まあ実際そうだ。(ちなみに,タイムズはほかのどの新聞よりも激しくIRAを憎悪している論調だと思う。テレグラフよりもさらに激しいんじゃないかなあ。話題がIRAとなると燃える燃える。)

ただ,ブレアはダブルスタンダードを自覚してあえてやってるわけで,そんな人間に「あなたの行動はダブルスタンダードではありませんか」と指摘したって何のダメージも与えない。

っていうか,選挙はもう始まってる,というだけで。タイムズは登録しないと記事が読めないから私は記事は見てないのだけど,これからもずっと「こんな二枚舌男が首相なんてとんでもないですよね,みなさん」呼びかけ作戦を展開するであろう――保守党に政権を取ってもらいたいのだから。

ちなみに,ずっと保守党支持の立場だったデイリー・メイルが,「保守党さん,次の総選挙では私どものサポートが自動的に得られると思ったら大間違いですよ,はっはっはっはっは」みたいな態度を表明。(デイリー・メイルはViscount RothermereことJonathan Harold Esmond Vere Harmsworthが所有しているので,貴族っぽくしてみた。長いインタビュー記事がこっちにあります。)これは,デイリー・メイルが労働党に大口の献金を考えているという意味にとるのが自然だろう。

一方,「イラク戦争反対」の論陣を敷いて,レイバー支持者の一部も取りこんだLibDem(自由民主党……と書くと紛らわしいのでLibDemで統一)も党大会やってたのだが,ケネディ党首の演説についての新聞の論調は,何だか冷たい。深読みすれば,これはメディアが本気でLibDemつぶしに取りかかったってことだろう。

労働党大会でのブラウン財務相の演説は,軒並みどのメディアでも「すばらしい」のオンパレードで気色悪いくらいだ。(ブラウン演説についてはどっかでスクリプトを見てからちゃんと書きます。)

というわけで,何がどういうふうに動いてるのか,日々のニュースからではまったくわかりません。

ニュースってのは動いた後に出てくるから。動いてる最中のことは出てこないから。いくら読んだってわからんことはわからん。

しかし政治ってほんとドロドロしてますねー。
posted by nofrills at 23:10| todays_news_from_uk/about_Blair | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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