2005年06月25日

「攻撃」

こうげき 0 【攻撃】
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(名)スル
(1)戦争やスポーツの試合などで、相手を攻めること。
⇔守備
「敵軍の背後を―する」
(2)相手を強く非難すること。
「失政を―する」
-- 三省堂「大辞林 第二版」より


こんな語を辞書で見ることはまずないので今回初めて見たのだと思う。ひとつは「戦争やスポーツの試合などで」の「など」が気になる。さらには,「戦争」と「スポーツの試合」が同列に置かれていることが気になる。もうひとつは,英語と日本語との非対応の部分に改めて気づいたということ。

1つめの「など」については特に書くべきことはないだろう。ただ,英語のライティングで,日本語の「など」の感覚でetcとか使うと,あまり高い評価は得られない。

「など」についてはそのうち何か書くかもしれない。

2つめ,「戦争」と「スポーツの試合」が同列に置かれていることだが,まずはオンラインの英英辞典を参照しておこう。

ウェブスター
attack v. tr.
1. To set upon with violent force.
2. To criticize strongly or in a hostile manner.
3. To start work on with purpose and vigor: attack a problem.
4. To begin to affect harmfully: a disease that attacks the central nervous system.


ケンブリッジ
attack verb
1 [I or T] to try to hurt or defeat using violence:
He was attacked and seriously injured by a gang of youths.
Army forces have been attacking the town since dawn.
Most wild animals won't attack unless they are provoked.

Compare defend.
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2 [T] to criticize someone strongly:
She wrote an article attacking the judges and their conduct of the trial.
The report attacks the idea of exams for 7- and 8-year-olds.

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3 [T] If something, such as a disease or a chemical, attacks something, it damages it:
AIDS attacks the body's immune system.
My rose bushes are being attacked by greenfly.

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4 [I or T] If players in a team attack, they move forward to try to score points, goals, etc.
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5 [T] to deal with something quickly and in an efficient way:
We have to attack these problems now and find some solutions.
The children rushed in and eagerly attacked the food (= quickly started to eat it).

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v. intr.
To make an attack; launch an assault: The enemy attacked during the night.


『大辞林』の「戦争やスポーツの試合などで、相手を攻めること」という定義のうち,「戦争」という語(war)はウェブスターにもケンブリッジにも出てない。もっと正確にいえば,「戦争」はviolent(ウェブスター),violence(ケンブリッジ)に含まれている。

「スポーツの試合」は,ケンブリッジは4番として特別に項目を立ててある。ウェブスターではここに引用した部分では言及がないが,次項の名詞としての定義の中に,やはり別項として出てくる。

個人的意見だが,やはり「戦争」と「スポーツ」は別項に分けてくれていた方がしっくりくる。「弁論上の攻撃」が別項になっているのであればなおさら。

でもひょっとしたら,“どちらにもルールがある”ということで,『大辞林』では「戦争」と「スポーツの試合」を同列に並べているのかもしれない。

3つめ。英語と日本語との非対応の部分について。

英語で書かれたニュース記事を読んでいると,「攻撃(する)」に相当する語は,attackのほかに,assault(名詞)とかoffence(名詞)/ offensive(形容詞)がよく用いられていることに気づく。

イラクの例で言えば,米軍がファルージャを「攻撃」といった場合に用いられるのは,attack,assault(名詞),offence(名詞)/ offensive(形容詞)だ。

一方で,特にassaultは A military attack, such as one launched against a fortified area or place.であるから,「レジスタンス側が米軍の車列に自動車爆弾を突っ込ませた」ような「攻撃」については,assaultは用いられず,attackが用いられる(eg: car bomb attack)

私は自分で英語を日本語にするときは,ある程度機械的にやっているのだが(精査するだけの時間は残念ながらかけられない。仕事なら別だが),そのときにassaultもattackもどちらも「攻撃」という日本語に置き換え,そしてその都度ちょびっとフラストレーションを味わう。

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さて,23日,サマーワの陸上自衛隊の車列の脇で爆発があったことが報じられている。リンク先記事(産経新聞)によれば,「路肩爆弾」であるとのこと。英語ではroadside bombと表されるものだ。

英タイムズ記事より:
In the normally calm southern city of Samawah, Japanese peacekeeping troops came under rare attack when a military convoy was hit by a roadside bomb. The troops, on reconstruction work under British protection, escaped injury.


実は今回,サマーワの路上爆弾を報じる日本のテレビニュースを聞いていて,私が耳にした限りすべて(NHKと民放NTV, TBS, テレ朝,テレ東)のニュースで「攻撃」と言っていたのに気づいた。

つまり,マスコミ用語であるところの「テロ攻撃」ではなく「攻撃」。

「テロ攻撃」は「テロリストによる攻撃」のことだろう。一方「攻撃」は行為の主体が不明確な場合にも用いられうるだろう。

サマーワの今回の路肩爆弾は,誰が設置したものかが不明だから「攻撃」と表されているという可能性はあるけれども,それでも「テロ」という用語が用いられなかったことは,強く印象に残った。

「テロ攻撃」は行為の主体が明らかにならない場合には――そしてその行為の主体が「テロリスト」でない場合には――用いることができない。

マスコミがハンコみたいに「自爆テロ」という4字熟語を使うとき,それは「その自爆を行なったのはテロリストである」ということを含意している。

でも,英語で書かれた記事を見てて,それら日本で「自爆テロ」と伝えられるものが,terrorist attackと書かれているのを見るのは,私はほとんどない――私は,彼らのことを「テロリスト terrorist」と呼ぶブッシュ&ラム爺の大本営発表を垂れ流す米国のメディアの記事ではなく,所詮は同じ穴のムジナとはいってもある程度までは節度も客観性も失っていない英国のメディアの記事を読んでいるからかもしれない。それらは英語では単にsuicide bomb(自殺爆弾)あるいはsuicide attack(自殺攻撃)だ。(好戦的な言葉が好きな人たちはkamikazeとか言うこともあるけれど,米911から時間が経過して,そろそろkamikazeも飽きられてきている様子。)

日本で「自爆テロ」と伝えられるものは,私の知る限り,英語では,car bomb (attack), suicide bomb (attack)などと表されている。それを「テロ攻撃 (terrorist attack)」と呼んでいるのは,ラム爺(米国)やシャロン首相(イスラエル)だ。

今回のサマーワの路肩爆弾を「攻撃」と呼んでいるのが,入ってくる外国語の情報をただ“直訳”したものではなく,「誰が攻撃しているのか」を把握したものであること,攻撃されているのが「占領軍」であることを認識した上でのものであることを願う。

# 国際法上,「占領軍は占領地の法律を改変してはならない」ということになっているが,“多国籍軍”の中心となる米軍の親分である米国政府がイラクの暫定政府(アラウィ首相)の人選に介入し,さらに現在暫定憲法として機能している「基本法」を定めたのがこの暫定政府だった,すなわちイラクの基本法の決定には米国の関与があるからといって,米国が占領軍ではないということにはならないのでそこんとこよろしく。(<一応ブラックジョークのつもり。)

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何となく検索してみたら興味深いものを見つけた。太平洋戦争(第二次世界大戦)後,日本は連合国に占領されていたのだが,そのときの史料。国立国会図書館のカタログより。
英連邦占領軍は、広報の中心的活動として、1946年4月9日、週3回、2ページのタブロイド紙として『英連邦占領軍ニュース(British Commonwealth News)』を発刊しました。……
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 英連邦占領軍は、おもに中国・四国地方に進駐しましたが、直接軍政(民政)に関与することはありませんでした。同軍の部隊は、イギリス、オーストラリア、 ニュージーランド、インドから派遣されたもので、主力はオーストラリア軍でした。


何が興味深いかというと,『英連邦占領軍ニュース』に含まれる「占領軍」が,英語のBritish Commonwealth Newsには一切含まれていないこと。

畢竟,翻訳ってこういうことなんですよと占領下の日本に言われている気分。

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追記:
http://www.asahi.com/international/update/0624/014.html
爆弾は迫撃砲弾を改造か サマワ自衛隊車列爆発事件
2005年06月24日22時14分
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 イラク南部サマワで陸上自衛隊の車列わきで爆発が起きた事件で、地元ムサンナ州警察当局は、24日までにサマワ各地に検問所を設け、不審者の拘束や捜索を続けた。爆弾は迫撃砲弾を改造したものとみられ、現場に遠隔操作が可能とみられる起爆装置の残骸(ざんがい)が残っていた。警察は、州外から流入した武装勢力の犯行の可能性もあるとみて捜査している。
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 サマワ警察幹部によると、爆発物は60ミリ迫撃砲弾を改造したものとみられ、現場には乾電池や電線類などがついた起爆装置が残っていた。リモコン操作で爆発する仕掛けになっていた。現場近くで道路の状況を見ながら、起爆した人間がいた可能性が強い。
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 警察当局は50人以上を拘束したが、多くは無関係とわかり釈放した。24日現在、バグダッドなど州外の出身者2人を含む18人を拘束している。サマワでは爆発事件の起きた23日以降、警察が各地に検問所を設置。現場周辺などの捜索が続いており、……


「60ミリ迫撃砲弾」は迫撃砲弾としては小型じゃないかと思います。(もっと大きい数値のをよく見るので。)

迫撃砲の解説@ウィキペディア

英語ではmortarと言います。(翻訳してるうちに覚えた。)
mortarの解説@ウィキペディア(英語)
……うーん,やっぱ60ミリは小型ですね。

サマーワでの迫撃砲による攻撃自体は前からありました。(例えば昨年8月の日経新聞記事とかをご参照ください。)だから,今回のロードサイド・ボムが迫撃砲弾の改造だったからといって,それだけでは何も物語るものではないだろうと思います。

情報チェック用にGoogle Newsリンク:
http://news.google.co.uk/news?
hl=en&ned=uk&q=samawah&btnG=Search+News
posted by nofrills at 02:57| i_dont_think_i_am_a_pacifist/words_at_war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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