2003年12月05日

ナマ小泉 [完全版]

この記事は「ナマ小泉」(2003年11月8日)の完全版。友人へのメールを編集したものです。■前説いろいろ
私が住んでいるのは東京都内で、ニュースなどに出てくるような候補者・議員はいないのだけど、実は自民と民主が厳しい戦いになっている模様……選挙戦終盤、自民・民主両党のトップが候補の応援演説に来ていました。

民主党党首の演説はあったことすら知らなかったので見逃しましたが、自民党総裁の演説は、選挙カーに乗ったウグイス嬢が「本日○時より、自民党総裁小泉純一郎が、○○駅前にて……」と絶叫してくれたおかげで事前に知ることができ、行ってくることができました。

私はいわゆる「無党派層」のひとりで、支持政党はありません。自民党総裁の演説を聞きに行こうと思ったのは、野次馬根性が基本(ナマ小泉だしぃ)、あと、やはりライヴでフルヴァージョンで聞いてみないとな、というのがあったから。テレビにしろ新聞にしろ、「ニュース」という形でもたらされるのは、何らかの編集を経ています。音楽で言えばサビの部分だけに加工されてるようなものです。

演説が行われる○○駅前に私が到着したのが、開始時刻を5分ほど過ぎたころ。既に「この人は誰?」というおじさん(あとで司会役の区議だか都議だかだと判明)が演説をしていて、けっこうたくさんの聴衆がいました。(聞いてる人がいたのかどうかはわかりません。)そのまま30分ほどは区議だの都議だの公明党だの、また自民党のなんとか長だのが入れ替わり立ちかわりで、まるで結婚式のスピーチ。

■候補者→総裁:「どうだすごいだろう。投票してくれよ」
開始時刻の25分すぎに候補者が演壇(車の上)に登場しました。候補者の熱意溢れる演説は10分ほどで終わり、開始時刻から35分をい経過した頃に小泉総裁の名が司会役の口から出されました。

そして小泉登場の瞬間、「きゃ〜」と黄色い声が前の方でちょっと上がって、後ろの方からカメラつき携帯を掲げた若い男女がたくさん殺到。(あの人たち、「ナマ小泉見た」というネタにするためか何か知らんがずーっと携帯掲げてて。何枚写真撮るんだろう。特に「美しい瞬間」「カッコイイ瞬間」があるわけでもないのに。)

「○○候補はあんなことこんなことをやってきた。すごい人です、パワーのある人です」と褒めちぎったあと、小泉総裁の演説は25分ほどは続きました。

演説の行われた○○駅前は、数年かけて区が巨額のお金を投じて整備したところです。私は選挙権を得るずっと前からこの自治体に住んできましたが、行政は基本的にハコモノ行政バンザイな感じ。候補者の“応援”に“かけつけた”区議だの都議だの、つまり地元の実力者たちは、「私たちの業績」を鼻高々と語っていました。「私たちはこんなにすごい」⇒「だから私たちの仲間もすごい」⇒「だからこの候補者はものすごいんだ」という展開。(ああ“応援演説”……でも集中して耳を傾けている人もいました。)

それを受けるかのように、小泉総裁も「私の業績」を延々と展開しました――改革は進んでいる/郵便局がクール便を始める時に最初1台240万と言われた機材が、民間に見積もらせたら80万だった/税金を注ぎ込んで大人数の公務員でやらなければならない仕事ではない/電話は民営化してもなくならなかった、それどころか民間が次々に参入して充実した/あなたの持ってるのは携帯電話ですね、しかもカメラつきですね(笑)/郵便もなくなりません/税金でやらなくてもよいのです/クール便だって郵便局より民間の方が早かった、だから安倍幹事長の大好きなアイスクリームも炎天下でも溶けずに届けられる(笑)/野党は総論のときは賛成だというのに、各論に入ると反対するんだ/彼らに改革をする力はない、公務員が票田なんだから、などなど。スパイス的に高級官僚批判、日教組批判など入れつつ。

(「低公害車」のことも実績として語っていましたが、あの声で「てーこーがいしゃ」と言われると、「抵抗・会社」と脳内変換されます。刷りこみとは怖いものです。)

はぁ……45分以上もあの人この人から「どうだオレはすごいだろう」を聞かされたもんですから、もうウンザリです。冷静に聞いてればツッコミどころ満載なのでしょうけれど、ウンザリしちゃってツッコム気にもなりません。正直、一杯クイっと飲みたくなってきました。でもそんなことをしたら背広姿の警備スタッフ・制服姿の警備スタッフ(警察官)に怒られちゃうでしょう。(実際飲むものも持ってませんでしたが。)

演説の車が止まっていた場所の真後ろのビルの3〜4階に小学生の通う進学塾があって、子供がいっぱいいます。でもうるさいから授業にならなかったのでしょう。みな窓に鈴なりになって「わー小泉さんだー」とばかりにはしゃいでいます。先生と思われる大人まで窓に貼りついています。(社会の授業だったらまさにすごい教材です。)

その子供たちに小泉総裁は声をかけました。「明日の1票にはならないけどこういう応援を聞くと元気になるねぇ」「小泉の名前は忘れてもいいけれど○○さん(候補者)の名前は忘れないでね」などなど。

近くにいたおばちゃん(60歳くらい)たちは「ユーモアのセンスがあるわねー」ときゃぴきゃぴ大喜び。

■語られなかったこと
やがて……演説は終わりました。

「自衛隊」の「じ」の字も、「9条」の「き」の字も、「憲法」の「け」の字も、「イラク」の「い」の字も出ませんでした。もちろん「アメリカ」の「ア」の字も、「ブッシュ(あるいはブレア)」の「ブ」の字も出ませんでした。

これがもし、新聞が「小泉外交の成果」などと書いている時期だったら、「ブッシュさんはねぇ」と得意満面で語る総裁がいたことでしょう。

世の中全体的に「ブッシュってプププ」な空気の中、「ブッシュ」は「ブ」の字も口にしてもらえませんでした。かわいそーに。日本における「ブッシュ」とは、「応援演説には来ないでくれ」と言われた前の総裁みたいなものです。都合が悪いから言及されない存在。

そして語られないものはなかったことになる。嘘。

■技術
小泉総裁の演説はやはり上手かったです。20分以上聞いていて飽きない。(言ってる中身は別として。)彼の言ってることだけを聞くと一応説得力もある構成になっている。国会会期中ののめーっとした平板な棒読みではなく、聞き手の感情に訴えるツボを押さえています。

あと、登場したときは声が枯れていたのに、しばらくしたら普通の声になっていたのには「演説屋」を感じました。

■付録:人間ウォッチング
壇上の小泉総裁は顔色悪かったです。(光の加減もあるでしょうが、他の人々よりも青白く、黄色かった……連日の疲れで肝臓に負担が?)

聴衆の様子もちょっと書いておきましょうか。

区議だの都議だのの演説の時から既に動きできないくらいに混んでましたが、小泉登場でどーっと押され、私はけっこう前の方に移動してしまいました。

後ろの方では「20代か30代が多いところにあとから割り込んできたおばちゃん」という感じになっていましたが、前の方に行くと、「高齢者(男性6割女性4割)の中に30代っぽい人がちらほら、40〜50代もまあまあ多め」という感じ。その高齢者のみなさんが……

ぶっちゃけ、こわかったです。信じる者の目。陶酔する顔つき。「お手手のシワとシワを合わせてしあわせ〜」のポーズ。口角がちょっと上に向き、半開きにされたままの口。(首を伸ばすからどうしても口は半開きになっちゃうけどね。)

コンサート会場で、あこがれのミュージシャンを見つめるコアなファンの目。

若い人々はそんな目はしてなかったのですが、隣5列が高齢者ゾーンで、みなさん恍惚となっておられたので、もう、オーラが。

私はすっかりアテられて、ちょっと気分が悪くなりました。

素人分析:「言葉がハッキリしている。これまでの政治家とは違う」⇒「小泉サン」のすべてがバラ色に見える ⇒「この人に任せたい!」という強い意思。

そう言えば、今回の解散をもって引退した宮沢元総理が大蔵大臣になったとき、「英語がしゃべれる」というだけでやたらと持ち上げられていましたよね。

「小泉」は、ある意味、宗教かもしれません。聴衆の中には組織的に動員された人々がいたんだろうとも思います。でもそれだけではなく、「(作られた)カリスマ」を感じました。ロックスター、映画スターの巻き起こす集団熱狂。見られる側と見る側が一緒になって作り上げる熱狂。

小泉総裁が演台から降りようとした時、あまりに胸クソ悪くて「イラクに行くのは誰だ」という内容の野次を飛ばしました。その瞬間、陶酔していた高齢者@私の周囲のオーラが私に向かってつきささりました。おーおー、スゴイこと言うねーという冷笑を含んだ視線とともに。

隣にいた若い聴衆のこと。

私が最初に立っていた場所(区議だの都議だのが話してる間の)では、左隣が若者(男性)のペアでした。多分20歳そこそこ。毛先がランダムにカットされた茶髪、SHIPSとかで売ってそうな服、という「シンプルだけどおしゃれ」な感じの“イマドキの若者”です。

ひとりはいろいろととても詳しくて自分の意見も持っている人。もうひとりは聞き役で素朴な疑問を返すという感じ。彼ら若者ペアが話してた内容は、正直、演説よりずっとおもしろかったです。(肩が触れる距離では聞くつもりなくても聞こえてくる。若者よ、聞いててすまん!)

詳しい方は、年金とか公共事業とか政治家の収入とか利権とか、ひとしきり疑問点をぶちまけた後、「改革改革って、20年前と比べて何か変わったのかと問い詰めたい」と。(心の中でその若者に座布団3枚進呈。)さらに、演説に拍手が起こると「今拍手してるのってサクラっしょ?」と断言。スリリングでした。

あとは愚痴ですが、おばちゃん(推定50代後半)団体(おばちゃんは3人集まれば「団体」となる)はもう……。3人とも背が低くて(推定148cm)「見えない」「見えない」といつまでもグチグチグチグチ。おばちゃんたちが後から来たんだからしょうがないでしょー。挙げ句「前に大きい人がいるから(見えない)」って、それは私のことか。さらには真後ろにいたおばちゃんがカバンの中をごそごそごそごそしてるんだけど、ちっちゃいおばちゃんの手の位置=そこはオレのケツだっ!!!ちょっとは気を使え、おばちゃん!で、ごそごそごそごそして出てきたのが大袋入りの「のど飴」かよー!それを団体のお仲間に回す。どっかのお笑いのネタで、「おばちゃんはどうしていつも袋に入った飴を持っているのか」というのを思い出しました。

このおばちゃんたち、区議だの都議だのに「話が長い」、候補に「がんばってきたんだから当選してほしいわね」、小泉に「きゃ〜♪」って言ってました。服装のセンスとかが、何て言うの? まあ「エコ・フレンドリー」とかではありえないという。(化繊に原色のプリント柄……こういう感じの人、全体的に多かったです。)

ではではこんなところで。
posted by nofrills at 03:42| election_2003 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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