2004年06月27日

IRAの拷問対処マニュアルとブッシュのアイルランド訪問。

ちょうどブッシュがアイルランドを訪問したばかりですね(←リンク先ははなゆーさんのところ)。

私は先日ある書物でIRAの内部文書がどっさり引用されているのを読んでて寝られなくなったのですが,その文書がまるごとウェブにアップされていました。
Green Book IIGreen Book IIとは,IRAメンバーに対し,「逮捕されたら,こういう目的でこういう拷問が行われるので,こう対処しなさい。こういう目的なのだからこういうことはしてはならない」という説明が延々と書かれている文書です。要は拷問対処マニュアルです。

こういう文書が存在したということではなく,これがウェブで読めるということに,単純にびっくりしています。

さて,アイルランドといえば北アイルランド。「ベルファストのオレンジ・マーチは無事に終わった」とBBCはタイトルを立ててますが,周辺の警備がかなりものすごいことになっていたというのは記事の下の方の写真を見るだけでもわかります(アイルランドのニュースサイトでは「厳重警備の中,オレンジ・マーチ強行」といった感じの記事がありました)。

一方,自治が停止されている北アイルランドはこの9月にも大きな動きがありそうですが,この件はまた改めて。

なお,ブッシュがアイルランド(EU議長国の順番なのですね)を訪問していますが,2003年の米英首脳会談がわざわざベルファスト(北アイルランド)で行われたことが,北アイルランドをめぐる政治的駆け引きの一環でもあったように,今回のアイルランド訪問もまた,アイルランドという島にとっては,「米大統領がアイルランドに」という意味があるのかも。President Bush has said he stands ready to help in the Northern Ireland political process.だそうです。(米国と北アイルランドとの関わりは,日本ではほとんど伝えられませんが。)

Mr Bush said he viewed the Northern Ireland process as a model for conflict resolution and it was a very important issue for his administration.


……現実には,北アイルランドはa model for conflict resolution である,のではなく,a model for conflict resolution にする,のです。「分断し統治せよ」の見本というか,カトリックとプロテスタントで二分し,両者に異なった社会的位置を与える,という最もシンプルな形が取られたのが(北)アイルランドです。ブレアは「北アイルランド和平」を自分の功績として誇りたいようですが,なぜconflictが生じたのかを深く考えているかどうかは別問題かと思います。(そのへん,まだあんまりよくわかりません。調べてないので。)これまで対話がなかったユニオニスト(英国残留派)とナショナリスト(アイルランド独立派)との対話を実現させたことは事実としても。

というか,北アイルランドが世界の紛争解決のモデルにされていいのかどうかって気がすごくするんですが。

あと,これ↓は,ブッシュのスピーチライターが書いたお題目ですが,普通に一般論として納得できるものです。
"When this conflict is resolved, it will be an example for others - that long-simmering disputes can be put behind them and free societies and peaceful societies can emerge for the interest of the peoples which have been involved in those disputes."


ただしconflictとかdisputeを引き起こしたのは何かを問わず,「現状がこうだからこうすればいい」ということをしてるだけでは,これは永遠にお題目で終わるでしょう。

最後に,あまりに呆れて文意を読み違えてるのかと思った一節。文中の「アイルランドのテレビのインタビュー」ははなゆーさんのところにスクリプト(書き起こし)へのリンクがあります。
Mr Bush gave a clue as to how he will approach the Iraq issue when he told an Irish television interviewer that the US had made the world a safer place and deserved to be judged on its values, not on how some of its soldiers had treated prisoners, the BBC's Kevin Connolly in County Clare says.
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"Most of Europe supported the decision in Iraq. Really what you're talking about is France, isn't it? And they didn't agree with my decision. They did vote for the UN Security Council resolution," Mr Bush said.
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"We just had a difference of opinion about whether, when you say something, you mean it," he added.


まず,not on how some of its soldiers had treated prisonersっていうのは言うまでもなくアブ・グレイブでの件で,やはり「一部のはみ出し者が」と言い張っている。次にMost of Europe supported the decision in Iraqっていうのは,フランスも最終的にはこの5月の国連安保理決議に賛成したことを「支持された」と言い換えている。

というか,ここで冒頭のGreen BookIIに戻り,アブ・グレイブで行われたmistreatmentの数々と,IRAが対処マニュアルまで作成したtorture(英軍による,マニュアル化された尋問手段)を比べてみると,ほとんど違いがないことがわかるんですが。。。なので,アイルランドの人に「あれは一部のはみ出し者が」と言ったって,「政治家はそう言うしかないよね」っていう失笑を買うだけではと思うんですよね。

ちなみに,米国は人権報告で英国がIRAメンバーやそうであると推定される人に対して行っていたtortureを,「非人道的である」として糾弾したことがあります。それも,数年前に「ついうっかり」昔のデータを元に「今年の人権報告」を作成して英国を非難したばかりです(この件についての過去記事)。

ダブル・スタンダードと呼ぶのもばかばかしい。

あんまり頭に来ているのでまったくまとまったことが書けませんがご容赦。

なお,南アフリカを参考に,北アイルランドでも和解をというような記事もBBCにあります。アパルトヘイト――南アフリカの場合は「人種隔離」ですが,北アイルランドの場合は「アイリッシュ・カトリックの社会からの隔離」(“人種”問題ではない)――後の和解のモデルとしての南アフリカ,ということのようです。

あと,アイルランドのサイトに行くと,prime ministerのことをTaoiseachと書いてあるのですが,これ,一発で発音できません。ゲール語です。最後のchは(多分)口蓋摩擦音の「ハ/ク」で,「ティーシャハ」と読むそうです。
posted by nofrills at 18:03| todays_news_from_uk/northern_ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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