2005年12月21日

Oyster cardとNational Rail

1つ前の記事との関連で、Oyster cardと鉄道(National Rail)について。

最大の問題点は、Oyster cardのPre-payが、鉄道では多くの路線で受け付けられていないということにある。つまり、Travelcardを使っている感覚でOysterのPre-payを使って地下鉄から鉄道へと乗り継ぐと、例によって途方もないペナルティ・フェア(キセルとみなされる)可能性があるし、逆に鉄道から地下鉄に乗り換える場合には最初に乗る駅でOysterのPre-payが使えない。

英国では自宅から職場までの交通費は支給されないのが基本なので、公共交通機関を使って通勤している人なら誰でも交通費はなるべく節約したい(安く上げたい)。TfLでは「Oyster pre-payがお得ですって言ってるでしょ!」というキャンペーンを、Oyster pre-payを使わない場合の運賃を心臓発作を誘発しそうなくらいの(<大げさ)額に引き上げるという強硬な策で開始した。しかし、その「お得」なOyster pre-payを使えるのは、地下鉄(Tube)沿線の人だけで、鉄道(National Rail)沿線の人は使えない、という問題が出てきたわけだ。GLA公式のウォッチドッグであるLondon Travel Watchでは、次のようにかなり強い調子でOystercard pre-payとNational Railについて批判をしている。
We believe that the limited nature of the availability of Pre-Pay Oystercards on National Rail is very disappointing. We can see no compelling reason why the price of rail travel in London should not be fixed on a single scale, with a common fares strategy and ticketing system on all routes. We consider that it is absurd and unreasonable for passengers to be denied the opportunity to use the Oystercard's pre-pay facility, if this would meet their needs best, merely because their local service is provided by a National Rail operator.


こういうことが「問題」になっているのは、Travelcardを使えば地下鉄と鉄道はシームレスで、来年1月からのOyster pre-payは、場合によってはそのTravelcardより安くなるというものだからだ。鉄道利用者が割安なOyster pre-payを使えないのはおかしいんじゃないか、ということである。

例えばZone 2からZone 1に通勤するために1日につき1往復する場合、2006年1月からの運賃では7日間のTravelcardでは£22.20となるが、Oyster pre-payではZone 1-2は1回乗車するごとに£2.00(朝7時から夜7時)で、1日の交通費は£4.00、週5日通勤するとして£20.00である。つまり、Travelacardの方が£2.20高くなってしまう。週末もZone 1に出るのならTravelcardを買えばよいが、そうじゃなければOyster pre-payにしたほうが安い。(£2.20といえば、パブで1杯飲める金額だ。)

この場合、Zone 2の利用駅が地下鉄であれば問題なくOyster pre-payが使えるのだが、鉄道だとOyster pre-payが使えない場合がほとんどだ。

このことは、Londonistの12月2日記事や、London Underground blogの12月9日記事などでも取り上げられているのだが、公的な性格の団体であるLondon Travel Watchでも、SI21 Oystercard issuesとして大きく取り上げている。PDFファイルから抜粋すると:
The most significant area of complaint has been the non-acceptance of Oystercard Pre-pay ... on National Rail services. Currently, there are only a small number of National Rail lines where Pre-pay can be used. These are lines where, historically, Underground and National Rail tickets have been inter-available. They tend to cover journeys that can be undertaken on parallel routes (for example, Marylebone/Baker Street to Amersham) or between pairs of stations for which both systems cater (for example, Moorgate to Finsbury Park and Kentish Town to London Bridge).


これについて、National Rail(1996年に民営化された旧British Railで、National Railと総称されてはいるが、実際に運営している会社は、路線ごとに異なっている)からの説明としては:
National Rail operators argue that full Oystercard availability cannot yet be introduced as there are fewer gated stations; there are intellectual property rights issues relating to the software; there are ticket machine compatibility issues and currently no zonal fares structure for single/return trips on National Rail (other than on Southern).

つまり、「ゲートがある駅が少ない」とはつまり無人駅(改札のスタッフがいない駅)が多いということ、「ソフトウェアに関する知的財産の権利の問題」とはOyster Pre-payを受け付ける機械を設置するにはソフトのライセンスを買わなければならないということ(Oyster自体はTfLがやってるもの=ロンドン市がやってるもので、鉄道はロンドン市とは別の運営、ただしインフラの管理とかはロンドン域内はTfLのはず。。。ややこしいから間違ってるかも)、などといった事情があげられている。

問題は(太字は引用者による):
However, the current situation means that many passengers do not understand where they can use the Oystercard Pre-pay and where they cannot and fail to understand why the full benefits of Oystercard cannot be made available.

つまり、「利用者はどこでOyster pre-payが使えてどこで使えないかがわからない」ということで、これが混乱を引き起こしている。

……とここまで調べて書いてはみたものの、ううむ、これはおそらく多分に感覚的なことでもあって、実は東京で生活してる人は混乱しないんじゃないかと思うんだけど。。。どうでしょう。東京では、「私鉄と地下鉄のプリペイドカードはパスネット、JRはSuica」というシステムだし、私鉄と地下鉄とJRを乗り継ぐたびに料金がかかるのは当たり前のことで(例えば小田急で経堂から新宿に出て、JRで新宿から池袋に出て、池袋からは東武で板橋に出れば、小田急とJRと東武の料金が別々にかかる)、それは単発で切符を買うにせよ、プリペイドで改札を通るにせよ、定期を買うにせよ、同じ。

ところがロンドンでは、経堂も板橋もZone 2で、新宿というZone 1の駅を通過するから、Zone 1-2のTravelcardでまかなえるのが当たり前だったわけで(グレーゾーンとしては、Zone 2だけの切符でも問題なしという場合すらもある)、そのTravelcardに置き換わるのが「Travelcardより安いOyster」みたいに位置づけられたときに、小田急・JR・東武の3つの路線のうち、小田急だけOysterが使えませんと言われて、はいそうですかと納得できるかっていうとできない、ということなんじゃないだろうかと思う。

ちなみに、Oyster pre-payが使える鉄道の路線は:
Oyster Pre Pay
Can be used on the following National Rail services. The routes are:
*Amersham to Marylebone
*Finsbury Park to King's Cross/Moorgate
*Harrow & Wealdstone to Euston (but not a Kilburn High Road/South Hampstead)
*Kentish Town to Moorgate/Elephant & Castle/London Bridge
*Liverpool Street to Walthamstow Central/Tottenham Hale/Seven Sisters (but not at intermediate stations)
*Richmond to Gunnersbury
*Stratford to Canning Town
*Stratford to Liverpool Street
*Upminster to Fenchurch Street/Liverpool Street via Barking (but not at Forest Gate/Maryland)
*West Ruislip/South Ruislip to Marylebone (but not at intermediate stations)

というわけで、「TubeとRailが並行して走っている路線」ということになる。(だったらTubeを使うよね。)

ロンドン南東部や北東部の地下鉄のない地域の路線は、このリストに含まれていない(つまりOyster pre-payが使えない)から、かなり大勢の人に影響する問題になると思う。

ところで、これを調べてて、そういえば昔(BRの民営化の前)ってTubeとRailを単発の切符で買う場合、どうしてたんだっけ?と思い出そうとしたんだけど、思い出せない。というのは、ロンドンにいる=Travelcardを持っている、という状態だったような気がするから。

ただ、Zone 6のBR沿線に滞在してたとき、都心部(Zone 1)に用があって出るときは、Zone 1-6のTravelcardより、単純にDay Returnの方が安かった(ただし都心部で地下鉄やバスを使って移動するとTravelcardの方が安くなる)というような記憶もある。

※余談:
本棚から1991年に出版されたガイドブックが見つかったので、料金比較をしておこう。ちなみに1991年といえば、英国がものすごい不況で「ロンドンの街角には失業者があふれ」とガイドブックに書かれていた(そしてそれは本当だった)時代である。ちなみにそのころのどんぶり勘定用為替レートは、£1=¥250くらい。(今は£1=¥200くらい。)(<日本は不況なのに、なぜか円が強くなっている。)

Zone 1のTravelcard (seven days: 以下同じ):
1991年=£7.80 → 2006年=なし

Zone 1-2のTravelcard:
1991年=£10.00 → 2006年=£22.20

Zone 1-3のTravelcard:
1991年=£13.80 → 2006年=£26.00

Zone 1-4のTravelcard:
1991年=£17.20 → 2006年=£31.60

Zone 1-5のTravelcard:
1991年=£21.60 → 2006年=£37.80

Zone 1-6のTravelcard:
1991年=£22.00 → 2006年=£41.00

※1991年の数値は、加藤節雄、『イギリス生活事典』、白馬出版、1991年に拠る。2006年の数値はTfLのサイトにある料金表(PDFファイル)。
posted by nofrills at 08:39| london_basic_info | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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