2006年02月15日

麻生外相についてのNYTの社説を読んでみる。

まずはNYTの社説の内容を要約している日本語の新聞記事(毎日新聞Yahooでの掲載ページ魚拓
<麻生外相発言>「誠実さも賢明さもうかがえぬ」米紙が批判
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 【ワシントン及川正也】米紙ニューヨーク・タイムズは13日、日中関係や靖国神社参拝などをめぐる麻生太郎外相の最近の歴史認識発言を取り上げ、「扇動的な発言からは誠実さも賢明さもうかがえない」と批判する社説を掲載した。……


こういうのは元の記事を読んでみたいので、NYTを見る。
Japan's Offensive Foreign Minister
http://www.nytimes.com/2006/02/13/opinion/13mon3.html...
※閲覧には登録が必要ウェブ版で見る限り(紙に印刷されたのでも同じだとは思うが)、「NYTの社説」は、毎日4本掲載されている。麻生外相について「攻撃的(Offensive)」という形容詞で語った社説は、2月13日に掲載された4本のうちの1本である。

※キャプチャ画像。(元ページはNYTのOp-Ed倉庫
nyt_jfm.png

ちなみに他の3本は、「営利目的の教育」、「家と呼べるところはどこにもない」(ハリケーン・カトリーナ関連)と、もうひとつはニューヨークの開発問題について。

つまり4本のうちの3本がアメリカ合衆国内の問題を扱ったもので、そのうちの2本がニューヨークの問題を論じている。

「4本のうち3本がアメリカ国内について、1本が外国のこと」というのは他の日でもだいたい同じような感じ。

ちなみに麻生外相についての記事が掲載された翌日(14日)は、「外国ネタ枠」はジャファリ氏が(引き続き)イラクの首相に就任したことについて。(残り3つは、チェイニーの誤爆誤射、アスベスト禁止法、ミッシェル・クアン。)

さて、NYT社説を読む前に、この記事の表題、Japan's Offensive Foreign Ministerについて。

"Offensive Foreign Minister"なんていうフレーズは、私は少なくともこれまで見たことがない。ためしにGoogleでフレーズ検索してみると、検索結果は「約 155 件」で、そのほとんどがoffensiveとforeign ministerの間にコンマもしくはピリオドが入ったものである。(例:After announcing an end to the offensive, Foreign Minister Mustafa Osman Ismail said that ... / India's top diplomat took the offensive. Foreign Minister Jaswant Singh defended ...)

つまり、「offensiveなforeign minister」という言い方は、ほとんどない。

多分……だが、これは例えば「守備的フォワード」とかいうのと同様のものではなかろうか。(^^;)

また、offensiveという語だが、これはもちろん「攻撃的な」という訳語で問題ないのではあるが、この形容詞の元のoffendという動詞は"to make someone upset or angry"という意味で用いられることが最も多い動詞で、offensiveは"making someone upset or angry"という意味をも有する。(ケンブリッジ辞書

というか、offensiveがはっきりと「攻撃的」の意味、つまり「攻撃のための」で用いられるのは、offensive weaponsとか、あるいはスポーツの文脈(「攻撃的ミッドフィルダー」など)が多いように思う。

そう思って、NTY社説の見出し、Japan's Offensive Foreign Ministerを見ると、「日本の攻撃的な外相」というより、「人の神経をさかなでする日本の外相」とかいう感じかな、とも思う。

さて、本文。

とにかく短い。ワード数は、OpenOfficeのWriterで数えたら342ワード。

書き出しのパラグラフは:
People everywhere wish they could be proud of every bit of their countries' histories. But honest people understand that's impossible, and wise people appreciate the positive value of acknowledging and learning from painful truths about past misdeeds. Then there is Japan's new foreign minister, Taro Aso, who has been neither honest nor wise in the inflammatory statements he has been making about Japan's disastrous era of militarism, colonialism and war crimes that culminated in the Second World War.

で、「はじめは読んでいる誰もがうんうんとうなづくような一般論を書き、次にそれとは食い違う例として、本題を提示する」というパラグラフ・ライティングの定石通り。

逆に言えば一般論の部分(People everywhereからabout past misdeedsまで)は読まなくてもよい。(これだけで37ワード。)

この部分での麻生外相についての筆者の評価は"neither honest nor wise in the inflammatory statements"で、第二次大戦期の日本についてはdisastrousと評価されている。

次のパラグラフは、第一パラグラフの末尾のthe inflammatory statements he has been making about Japan's disastrous era of militarism, colonialism and war crimes that culminated in the Second World War.について具体的に述べて展開している(サポート)。

the inflammatory statements he has been making については、Besides offending neighboring countries that Japan needs as allies and trading partners, he is disserving the people he has been pandering to. と展開。

Japan's disastrous era of militarism, colonialism and war crimes that culminated in the Second World War.については、such terrible events as the mass kidnapping and sexual enslavement of Korean young women, the biological warfare experiments carried out on Chinese cities and helpless prisoners of war, and the sadistic slaughter of hundreds of thousands of Chinese civilians in the city of Nanjing.と具体例を列挙。

この部分について、毎日新聞記事では、
従軍慰安婦問題や細菌兵器実験、南京事件について、日本の学校での現代史教育で「国の責任にきちんとけじめをつけていない」ことが反感の背景にある、との見解も示した。

とまとめている。

「国の責任にきちんとけじめをつけていない」は、原文では(public discourse in Japan and modern history lessons in its schools) have never properly come to terms with the country's responsibility である。

第三パラグラフは、麻生外相の最近の靖国、台湾の教育水準についての発言を短く記述。靖国神社についてはmilitaristicという形容詞が用いられ、「祀られている」はbe honoredと表されている。

また、第三パラの最後では「後から言いつくろったが、発言の波紋はそれで収拾をつけられるものではない」(<「訳」ではありません)というようなことが書かれている。

結びのパラグラフは、
Mr. Aso has also been going out of his way to inflame Japan's already difficult relations with Beijing by characterizing China's long-term military buildup as a "considerable threat" to Japan. China has no recent record of threatening Japan. As the rest of the world knows, it was the other way around. Mr. Aso's sense of diplomacy is as odd as his sense of history.


go out of one's way to do 〜は「わざわざ〜する」という意味。one's wayは「普段(普通に)していること」という感じ。ということは、「麻生氏は普段はそんなことしないのに、わざわざ煽っている」ということになる? それともこういう読みはあまりに原文に忠実すぎ? ちょっと判断がつかない。

(ちなみに、go out of one's way to do 〜は、普段はGreen Dayとかしか聴かない男子が、付き合い始めたばかりの彼女に合わせようとアヴリル・ラヴィーンのCDをカーステレオに入れてみた、というようなときに使う。<私が見かけた実例。ただし固有名は適当。)

China has no recent record of threatening Japan.というのが事実としてどうか、という点は、毎日新聞でも書かれている通りですが、この社説全体が「中国寄りの論評」(<毎日新聞より)というのはちょっとどうだろうと思います。第二パラグラフで日本の蛮行の数々を列挙したところに、韓国人女性や中国の都市だけでなく、helpless prisoners of warが入っていることだし。

結びの部分、As the rest of the world knows, it was the other way around. Mr. Aso's sense of diplomacy is as odd as his sense of history.は、うーむ、こりゃアメリカ的だなあ。。。と私は思うのですが、私が見当はずれかも。

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■追記:
麻生外相批判で最も読み応えのあった文章、「激高老人のぶろぐ」の2月10日、「麻生外相小児的に威張る」:
http://gekko.air-nifty.com/bc/2006/02/post_c3f0.html

引用:
 お坊ちゃんが「僕のパパはお金持ちなんだよ、外車も持っているよ、軽井沢には別荘があるんだよ」などと、相手構わず威張っている。麻生外相の近頃の発言を聞くと、このお坊ちゃんのイメージが浮かんでくる。ただ、この麻生坊やは、毛並みがよいと言われている割には品が悪く、年を食っているのでずる賢い。
 麻生外相は最近福岡で講演した際、日本政府は植民地台湾で義務教育を持ち込んだため、この国は極めて教育水準が高く、今の時代に追いついている、と自慢した。台湾を「国」と言ったので、中国の新華社通信がすぐに批判した。また中国外務省報道局長も、台湾の植民地化が中国人民に深刻な災難をもたらした歴史を歪曲している、と非難した。事実、台湾の植民地統治はそんなにスムーズに進行したわけではなかった。平地では「漢民族」の武力蜂起、山地では「蕃族」と呼ばれた原住民の頑強な抵抗があった。日本による統治の安定は、これらの勢力を制圧し討伐した長年にわたる軍事作戦の結果なのである。日本の統治は善いことずくめではなかったのだ。……

こう書かれている「激高老人」こと作田啓一さんは、1922年1月生まれ。1939年には17歳だった。
posted by nofrills at 01:00| 英語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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