2005年06月30日

ブッシュ演説――Seriously, is "it" worth it? What's worth what?

The work in Iraq is difficult and dangerous. Like most Americans, I see the images of violence and bloodshed.
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Every picture is horrifying - and the suffering is real. Amid all this violence, I know Americans ask the question: is the sacrifice worth it?
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It is worth it, and it is vital to the future security of our country.
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-- US President George Walker Bush, 29 June 2005 (source)


ちょっと“英文解釈”しとこう。It is worth ...のItは,前出のthe sacrificeを指す。the sacrificeはさらにその前のviolence and bloodshedを受けた表現だ。

だがそのviolenceで血を流しているのは,sacrificeとなっているのは,“誰”なのか? イラクの一般市民だったり警察官だったりでしょ?この愚鈍なネイティヴ英語スピーカーは,「我が国の安全のために」その血は流される価値があると言う(言葉にする)ことに,何もおかしな点を感じないんだろうか? アメリカのために,イラクが血に染まるのはworthであると?

いや,まじめにね,米国では米兵が怪我をしたり死んだりしてるシーンは映像としてはほとんど流れない。だから,ブッシュが「みなさんと同じように私も映像を見ている」という場合,その「映像」は「米兵の犠牲の映像」ではない。

アメリカで「みなさん」が見ている映像は,イラク人の流血の映像だ――それも,反占領/反米レジスタンスによる,無差別的なものも含む爆弾攻撃(<日本のマスコミはこれを十把一絡げに「テロ」と呼んでいるが)のものが主であり,米軍(を中心とする占領軍/多国籍軍)による「掃討作戦」や「検問」「パトロール」による流血のものは多くはない。

イラクで,反占領で武装闘争かましてる連中のせいでイラクの人たちが血を流しているのは,アメリカの安全のため?

これは何のブラックコメディ映画の台本ですか? それともSlip of the tongueですか?

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6月29日の夜のニュースで,ブッシュ大統領による29日のテレビ演説のうち,上に引用した部分が,映像&音声で流された。

思わず,「煙草をじゅっ」という動作を,テレビのスクリーンから50センチくらい離れたところでやっていた(たまたま手に持っていたので)。あの,得意げな顔に向かって。

私はマイケル・ムーア監督の『華氏911』をいまだに見ていない。その主要な理由は,ブッシュの声と顔がスクリーンから流れてくるのに耐えられないからだ。

テレビのニュースでブッシュがしゃべりそうになると,私は反射的にリモコンをひっつかんで音声をミュートにする癖が完全についている。それはまるで,「雨だ!」で洗濯物をあわてて取り込む,というくらいの習慣である。

しかし今日ばかりは,リモコンを右手につかんでいながら,ミュートにしたがっている人差し指をぐっとこらえていた。何を言いやがるのか,せめて日本のニュースで流される部分くらいは聞かなければと思っていたので。

おかげでまた,ブッシュの声に対するアレルギーと言ってもよいような症状は,さらに悪化した。一瞬でもあの声を耳にしたら,きっと私は暴れ出す。

What if this whole crusade is a charade?
And behind it all there's a price to be paid
for the blood on which we dine
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-- Trent Reznor of Nine Inch Nails, from the song The Hand That Feeds


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時計の針を――否,カレンダーを,1996年に戻す。
……いかにアメリカがイラクを封じ込めようとしても、陸路で人的交流をもち経済的にも依存しあっている周辺諸国がこの「村八分」に協力し続けることは、それら周辺諸国の経済にも大きな負担を与えることであった。年を重ねるにつれ、封じ込め網に協力できない周辺諸国が増えていく。イラクはそうした国々の意向を利用しつつ、「アメリカのイラク国民に対する人道的犯罪」として制裁を糾弾する。その一方でアメリカは、イラク政権こそが制裁の悲劇をつくり出した張本人だとして、「(イラク国民の死は)支払う価値のある犠牲なのだ」(クリントン政権期のオルブライト米国務長官)と主張する。
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--酒井啓子、『イラクとアメリカ』、2002年、岩波書店、p.127


Stahl: "We have heard that a half a million children have died [because of sanctions against Iraq]. I mean that's more children than died in Hiroshima. And--you know, is the price worth it?"
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Albright: "I think this is a very hard choice, but the price--we think the price is worth it."
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-- Interview of U.S. Secretary of State Madeleine Albright, 12 May 1996 (source)


一カ月で数千の子供が制裁下で死ぬ。これを「ジェノサイド」と呼ぶ以外に、適切な表現を私は知らない。
(国連人道問題調整局のコーディネイター長を辞任したデニス・ハリディの言葉)
--酒井啓子、『イラクとアメリカ』、2002年、岩波書店、p.126


This massive human suffering, however, has done nothing to weaken Saddam Hussein's government. The wealthy elite, who are still loyal to his regime, can afford to buy whatever food or medicine they need on the black market, and the widespread malnutrition and disease has successfully weakened what little internal resistance survived after the end of the Gulf War. The total failure of the sanctions to weaken Saddam's power, the successful elimination of his weapons of mass destruction program, and the terrible human cost of the sanctions have prompted the resignation of Dennis Haliday, former UN humanitarian coordinator for Iraq, Hans von Sponeck, former UN Humanitarian Relief Coordinator who replaced Dennis Haliday, Jutta Burghardt, former World Food Program Chief in Iraq, and Scott Ritter, former weapons inspector with UNSCOM, in protest of the continuation of the sanctions. Echoing the sentiments of the rest of this group, in his resignation letter Hans von Sponeck said that the "Oil for Food" program had failed to meet even the minimum requirements of the civilian population, and that as a UN Official he should not be expected to remain silent about what he saw as a true human tragedy that needs to be ended. In addition to these individuals, France, Russia and China, all permanent members of the UN Security Council, 72 members of the United States Congress, the Pope, 53 bishops, the World Council of Churches, the Presbyterian Church, and the National Gulf War Resource Center (NGWRC), the largest Gulf War veterans organization in the country, have all openly and vocally called for an end to the economic sanctions. ...
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経済制裁で人々は大変に苦しんだが,サダム・フセイン政権を弱体化させることはなかった。サダムに忠実な裕福なエリート層は食料であれ医薬品であれ,欲しいものは何でも闇市で手に入れるだけの経済的余裕がある。経済制裁による栄養状態の悪化や病気は,湾岸戦争後にも残っていたイラク国内の反体制レジスタンスを弱めてしまい,サダムの権力は弱まらず,大量破壊兵器計画を根絶することに失敗したばかりか,イラクの人々にとんでもない代償を強いた。このことで,国連のイラク担当人道問題調整局コーディネイターだったデニス・ハリディが辞任し,ハリディの後任となった前国連人道支援室コーディネイターのハンス・フォン・スポネックも辞任,さらに世界食糧計画のイラク担当責任者のJutta Burghardtも,UNSCOMの大量破壊兵器査察官のスコット・リッターも辞任した。みな経済制裁の続行に抗議してのことだった。スポネックの辞表には,「石油食料交換計画」はイラクの一般市民の最小限の必要すら満たすものではなく,国連職員として,自身が目撃した真の人道上の悲劇について沈黙を保っているわけにはいかない,この悲劇は終わらせねばならない,と書かれていた。彼らのほか,国連安保理常任理事国であるフランスとロシアと中国,米国の国会議員72名,ローマ教皇と53名の司教,世界教会協議会(エキュメニカルな組織),長老派教会,さらには米国最大の湾岸戦争帰還兵の組織である全米湾岸戦争リソースセンターが,経済制裁の停止を,公に訴えた。……
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-- The Thistle, Volume 12, Number 2: July 4, 2000


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さらに過去にさかのぼる。湾岸戦争(1991年)後の米国国防長官の発言だ――当時の大統領は今の大統領の父親のジョージ・ブッシュである。
さらには、「フセイン後」について明確な青写真をブッシュ政権がもっていなかったことも、積極的な「フセイン降ろし」を控えさせた要因であった。チェイニー国防長官(当時)は、同じ年にワシントン近東研究所で行なわれたシンポジウムで、次のように疑問を投げかけている。「フセイン後の政権はどうするのか? 次期政権ができるまで、どれだけの期間、我々はバグダードにいなければならないのか? 米軍が撤退したらイラク新政権はどうなるのか? いつも不安定なこの地域に安定を築くために、どれだけの犠牲をアメリカが払う必要があるのか?
--酒井啓子、『イラクとアメリカ』、2002年、岩波書店、p.122


引用文中にある「チェイニー国防長官(当時)」とは,ディック・チェイニーのことである――ブッシュ・ジュニア政権では副大統領だ。

ここでチェイニーの言う「犠牲」とは「アメリカ」にかかる負担のことだ。当時チェイニーは「アメリカがわざわざ犠牲を払わなくとも,サダム・フセインはいずれ政権から追われる」と考えていた。そんなことまでアメリカがコストを負担しなくても大丈夫だと考えていた。

サダム・フセインを政権から追い落とすために,経済制裁という手段がとられ,そしてそれは一般市民にのみ「犠牲」を強要してサダムは無傷で残った――というより,苦難のときを利用して,ますます自分を支えるシステムやら「カリスマ性」やらを強化していったように思われる。

湾岸戦争を題材としたフレデリック・フォーサイスの小説『神の拳』にも,「負けても勝つ」というサダムの考え方について触れられた部分がある。もちろん,酒井啓子さんのご著書にもそれは書かれている。

サダムを「負けて負け」させるために,2003年のイラク戦争は起こされた。

「イラクに暮らす人々」は勘定に入ってなかった。

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そして14年後の2005年,「イラク戦争」から2年数ヶ月経過した時点で,ブッシュ・ジュニアはイラクでの流血について,It is worth it, and it is vital to the future security of our country. 「(その血は流される)価値がある。そして我が国の将来の安全にとって不可欠なものである」と述べた。

米国の政策決定者は米国内向けのパフォーマンスで,「イラクを民主化するためです。中東の将来のためです」と言い続けてきた。

しかしついに,「米国の将来」すなわち米国の“国益”を,こんなにも躊躇いなく,言い立てるようになった。

あの愚鈍なネイティヴ英語スピーカーは,問題は2003年に始まったと思いたがっているし,それ以上に,そう思わせたがっている。

ブレアもそうだが,こういう大嘘をつく場合,本人が「これは真実だ」と信じていないと,どっかで揺らぎが出る。ブッシュの脳内ではこれが「真実」なのだ――「2003年5月1日までは計画通りだった,問題はその後に発生したテロリストどものviolenceだ」。

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ブッシュが「私も映像を見ている」と言ったその映像とは,何なのか? これか? これか? これか? これか? これか? これか? 

どれでもないだろう。

この大嘘つき野郎め。(<ちょっと古い映画字幕風に。)

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しかし,今年のG8サミットの報道は見たら吐くよ,確実に。議長国首脳はくそったれのブレアでしょ,呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ〜んのメンバーは,まず愚鈍なブッシュでしょ,それから根性の捻じ曲がったベルルスコーニでしょ,あとは俺様万歳で下品この上ないプーチンでしょ,誇大妄想のシラクでしょ,死んだ魚みたいな小泉でしょ,残るはドイツとカナダだけ……ドイツはまだしも,カナダの首脳がどういう人なのかほとんど知らないわけで,いずれにしてもカナダの首脳のことが日本でニュースになることはまずない。(以上,思いつく限りの罵倒表現を並べるテストを兼ねて。)
posted by nofrills at 02:25| i_dont_think_i_am_a_pacifist/words_at_war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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