訃報:岡枝慎二さん76歳=映画字幕翻訳家字幕スーパーの映画を見て学んだことはどのくらいあるだろう。映画が終わってエンドロールが流れ,最後に真っ黒の画面に「字幕:岡枝慎二」と出た映画の数々に,どのくらい教えてもらっただろう。
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岡枝慎二さん76歳(おかえだ・しんじ=映画字幕翻訳家)5月23日、心筋こうそくのため死去。葬儀・告別式は近親者のみで済ませた。自宅は非公表。喪主は妻寿子(としこ)さん。
代表作に「スター・ウォーズ」「プラトーン」「エマニエル夫人」など。
毎日新聞 2005年6月19日 0時47分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/fu/news/20050619k0000m060105000c.html
岡枝慎二さんの字幕および字幕監修作品一覧:
http://movie.goo.ne.jp/cast/375/
『エイリアン』や『スター・ウォーズ』や『プラトーン』といった作品のほか,『キリング・フィールド』とか,あとこのへんとかが王道なんだけど,アンディ・ウォーホール組のこれとか,ケン・ラッセルのこれとか,ヘルツォーク&クラウス・キンスキーのこれとか,デイヴィッド・リンチのこれとか,見ているだけでくらくらしてくるような映画が,歴史ヒーローものとかホラーとかアクションとか動物ものとが配置されたお仕事リスト。
それと,これ。確か大学のとき,「イタリアのネオリアリスモ」というくくりでやってた特集のときに見に行ったら,「字幕:岡枝慎二」と最後に出たので「英語だけじゃないんだ」とびっくりした作品。(パンフレットに書いてあったのだと思うけど,この映画,登場人物のしゃべる言葉が当時のシチリア方言で,標準イタリア語とは違ってるということだった。この言葉が音として本当に美しくて,一瞬だけ私は「イタリア語を勉強することにした」と思った。<実行していない。)
お仕事リストには7つくらいの言語が関係している。監修としてはこんなのも……ううう,タルコフスキーもですか。そうですか。
ううう……これもか(監修)。。。
この映画は……一生に一度は見ておかなければと思って特集上映で見たんだけど,私が甘かった,間違っていた。画面から臭いがしてきそうな凄まじさ。「やっと終わってくれた」とほんとに吐きそうになって劇場からふらふら出て,何か別の情報を入れないと吐く,くらいの状態で印刷物を見て,それでも耐えられなくて即映画館の外に出たのでパンフレットは読んでも買ってもいない。何を書いているんだ。取り乱してる。(この映画は……「考えさせる」とかいったレベルではなく,ただもうひたすら,生理的にきます。それが人工の世界だからなおさら。「表現」とは何か,というか。)
あと,今に至るまで知らなかったのだけど,これとこれも岡枝さんの字幕だったのね。。。
いろいろと思い出してきた。うぐぐ。
リリアーナ・カヴァーニ&ミッキー・ロークなのに(<笑)「さわやか」だったこの映画のことでも思い出せば。。。
岡枝さんのつくる,限られた字数と制限された表記での日本語から,とても書ききれないくらいに多くのことを吸収した(あるいは通過させた)。
合掌。
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追記:
検索してみたらベルイマンの本も出てきたし,今月で終わってしまう『季刊・本とコンピュータ』では「日本語の読み書き・タテかヨコか」という問いに答えておられる(99年)。ノーマン・メイラーの翻訳も。