2005年07月02日

manslaughter

先日も映画「ミシシッピ・バーニング」のモデルとなった事件で被告がmanslaughterで有罪となった(murderではなく)ということを書いたが,6月28日にも,別の件・別の場所で,manslaughterで有罪判決という記事が出ていた。

Israeli soldier guilty of killing Briton in Gaza
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,2763,1516235,00.html
An Israeli soldier was convicted yesterday of the manslaughter of a British pro-Palestinian activist, Tom Hurndall, in the Gaza strip after a two-year battle for justice by his parents.
_
Sergeant Idier Wahid Taysir faces up to 20 years in prison for shooting Mr Hurndall as he shepherded children to safety from gunfire in Rafah refugee camp in April 2003 and for lying to army investigators about the circumstances. Mr Hurndall died in London nine months after the shooting.
_
His father, Anthony, welcomed the verdict but said that Sgt Taysir's superior officers should also be held to account for a military policy that "encourages soldiers to shoot civilians" and is "part of a culture of impunity in Israel".
_
"I think that he is a scapegoat, a pawn in the larger system. He was laid at the sacrificial altar of Israeli policy," he said. "There seems to be a tacit policy in place that shooting Palestinians is, in some way, fair game."


トム・ハンドール(ハーンドール)は「流れ弾にやられた」のではない。頭を狙撃された。

銃弾は彼の脳に著しい損傷を与えた。狙撃されてからの数ヶ月をいわゆる植物状態でロンドンの病院のベッドの上で過ごしたトム・ハンドールは,2004年1月に亡くなった。享年22。

これはmanslaughterなのだろうか。

ガーディアンのオビチュアリ――彼がどのようなことをしてきたかについて:
http://www.guardian.co.uk/obituaries/story/0,3604,1128176,00.html

彼についての詳しい記述は,遺族・友人らによる基金のサイトにある。
http://www.tomhurndall.co.uk/

銃でトム・ハンドールの頭を狙ったとき,このイスラエル兵士は何か考えていただろうか。

兵士が逮捕されてから,「トム・ハンドールを撃った兵士はアラブ系だ」といった情報が入ってきた。

だから何?


エスニシティは関係ないでしょ。それも,区別しなければまずいような場合にだけ持ち出される「エスニシティ」なんてなおさら。

逮捕されるまでにもいろいろあったのだが,そのあたりはこちらに。以下の記述はこのリンク先を読んでいることが前提。

さっきテレビのニュースを見ていて,「米国で2頭目のBSE」について,米国の当局者がそれでも「安全だ」と言い,眉ひとつ動かさずに「ウシ食って死ぬ確率より買い物途中で交通事故で死ぬ確率の方が高い」と記者会見で述べ,さらに日本の当局が「あのウシは輸入とは関係のない高齢のウシだったから大丈夫」というような反応をした,というニュース。これに対し,米国内で検査をもっと厳密にやれと要求している団体の人(元農業官僚)が「政府は事実を知りたくないから,知らずに済む方法をあえて選択しているのでしょう」と苛立ちを秘めた硬い表情で述べているインタビュー・フィルム。

それを見てなぜか,トム・ハンドール狙撃事件のことを思い出したわけだ。

事実を知りたくないから,知らずに済む方法をあえて選択している。

さらに,事実が判明したとき,何らかの逃げ道が必ず発見される。

「あのウシは高齢だ。」

「狙撃したのはベドウィン兵だ。」

だから,何? 米国でBSEが発生したことに変わりはないし,イスラエル兵が民間人を狙撃したことに変わりはない。

それと,トム・ハンドールはまさに将来を切り開こうとしていた若者であるという以上にマンチェスター出身の英国人で,だからこそ彼が狙撃されて殺されたことは,英国では多く報道される。

「狙撃塔から頭を狙撃」という方法でひとりの人間が殺された(正確には「植物状態にされた」と言うべきか?)。その人がたまたま英国人だったから表面化した。(むろん,英国の対イスラエル外交パワーも重要な要素のひとつだ。)

パレスチナ人ならどうだ?

きっとmanslaughterにもなりはしない。

トム・ハンドールは何のために殺されたのか? まさか「ここではこんなことはよくあることなんです」と英国に知らせるためじゃなかろう。でも結果的に,彼の死はそれを知らせることとなった。

昨日,『ホテル・ルワンダ』について「人命が土と同じくらいの価値でしかない場所」でのことを伝えなければならないと思ったという,この映画の監督のコメントを読んだ。(→過去記事

60年前の日本も,特に連合国側から見れば「人命が土と同じくらいの価値でしかない場所」だったのだろうし,東アジア・東南アジアは,日本の特に軍から見れば「人命が土と同じくらいの価値でしかない場所」だったのだろう。

その後もあちこちで「人命が土と同じくらいの価値でしかない」かのようなことが起きている。

ブッシュのよく言うWe must defend our freedom(私たちは私たちの自由を守らねばならない)は,「私たちの暮らす場所が,人命が土と同じくらいの価値でしかない場所にならないようにしなければならない」であるべきで,さらに,「私たち」とはある国籍の人たちやある民族・人種の人たちだけに限定されるべきではない。

We believe that no nation is responsible to itself alone, but that laws of political morality are universal; and that obedience to such laws is incumbent upon all nations who would sustain their own sovereignty and justify their sovereign relationship with other nations.
-- THE CONSTITUTION OF JAPAN

_
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
――日本国憲法前文
posted by nofrills at 21:53| i_dont_think_i_am_a_pacifist/words_at_war | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。