2006年06月28日

Spain 1-3 France

Spain 1-3 France
http://newsimg.bbc.co.uk/sport1/hi/football/world_cup_2006/4991524.stm
(→試合終了時のlive textの魚拓

相手スペインじゃ無理だし、そもそもうちのテレビじゃ中継が見られないし、ということで、試合そのものはあとから録画で見るとして、でも5時くらいにのそっと起きたので、BBCとITVのテキストで試合経過だけ追っていたんですが、84分(ITVでは83分と出ている)に2点目が入って(ヴィエイラ:今大会2度目のMan of the Match)2−1! これで私の目が覚めた。つーか生放送で見ていたかった。終了間際にはジダーンがダメ押しの3点目。もう何も言うことはございません。くはー。平均年齢30歳+の「シセ+10」(今日はあのリストバンドはしてなかったみたいだけど)。

france-spain-84mins.png

試合終了のホイッスル後、アディダスのユニの素材の伸縮性をアピールするジダーンとヴィエイラ:
http://fifaworldcup.yahoo.com/06/jp/w/photos/index.html?i=8&d=1

気になるのは、88分にアンリ OUT、ヴィルトール INの交替があったこと。アンリ、どうかしたんでしょうか……。ただの交替ならいいんですが。17日(グループリーグ中)の段階で、友人へのメールで
> B組1位イングランド、A組2位エクアドルでイングランド抜け(笑)、
> D組1位ポルトガル、C組2位オランダでポルトガル抜け、
> よって7月1日はイングランド対ポルトガル。(笑)
というあまりに「楽観的」な予想をしてみたら、これが見事に的中したんですが、フランスがスペインの屍を踏み越えてクオーターファイナルに残るというのは、まったくの予想外でした。

この組み合わせも「遺恨試合」といえば「遺恨試合」。2004年に当時新任のスペインの監督が、練習中に、アーセナル所属のスペインの選手に向かってアンリについて人種差別的な発言をした。監督はその選手を奮起させるためにそのような発言をしたと弁解している。
http://en.wikipedia.org/wiki/Thierry_Henry#Spanish_Racism_Incident
(具体的な発言内容の英訳は、こちらの記事に。)

後に監督はこの件でFIFAから罰金を科されている。(もっと重い懲罰もありえたところだが。)

Aragones fined for Henry remarks
http://news.bbc.co.uk/sport1/hi/football/internationals/4055395.stm

スペインの監督がアンリについて人種差別的な発言をした1ヵ月後に、マドリッドでイングランド対スペインの親善試合が行われたのだが、そのときにもイングランドのアシュリー・コールやショーン・ライト=フィリップスに対して、観客席から人種差別的野次が飛んだ。(→当時書いたもの

当のアンリは、スペインの監督の発言に自身で反応するのではなく、フットボール界が対応することを期待していて、自身では発言しなかった。けれどもイングランド対スペインの親善試合があまりにひどかったことから、自分の立場を使って働きかけていかなければというように考え方を変えた。それがStand Up Speak Upキャンペーンだ。
http://www.nike.com/standupspeakup/index.jsp
キャンペーンのビデオ(英語版)には、ティエリ・アンリ、リオ・ファーディナンド、ロナウジーニョ、ファンニステルローイが出演している。(ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語など各ヴァージョンは検索結果から。国によって、ロベカルが出てたりアドリアーノが出てたり。)

「ごく少数にせよレイシストがいて、大声で叫んでは全体に影響を与えている。ガチのレイシストを変えることはできないだろうけれど、それ以外の大多数の人々に対して、レイシストに反対するよう働きかければ、レイシズムを叫び散らす人々が何かいづらいと感じるようにすることができる。」
http://www.time.com/time/europe/hero2005/henry.html

イングランドのフットボールは、選手を人種で差別するということがかなり少ない。今大会の控えメンバーのうち、サポからの「もっと出せや」の声が最も多いアーロン・レノンは、やや逆説的に「いかにもイングランド」というか、「7つの海」を視覚化したようなルックスで、しかも名前はアイリッシュだ。彼がサポから「もっと出せや」と言われているのは単に「出てくれば試合がおもしろくなる」からなのだけど、くだらないホワイト・オンリー主義やそれに基づいたナショナリズムがスタンダードであれば、彼への賞賛はこんなに大きくはないだろう。

「人種」から少し離れてみる。フットボールが好きで、地元のクラブやチームをサポートしていて、それゆえ相手を貶めること、しかも「俺は嫌いだ」ではなく「あいつらバカだ」というようにわけのわからん一般化をすることは、イングランドのリーグ内でもよくあることで、特にアーセナルはフランス人が多かったから、それをネタにしたものがいろいろあった。たとえば、2003年にイラク戦争肯定のクソ右翼タブロイドSが「ピレスがイラク戦争反対を理由にストライキの構え」って報道をして(これはまったくのガセだったのだけど。まったくくだらない)、そのあとの試合では特に相手のサポから「フランス人」に対する野次の嵐になった。もっと古いところだと、2000年にエマニュエル・プティがアウェイの試合で観客席からのverbal abuseにたまりかねて、交替でベンチに下がったあとでtwo finger saluteをしてしまった(確か罰金)という事態もあった。

こういうふうに、「おらが町のクラブ」をサポートしているはずが、いつのまにか「ナショナリズム」が入り込んでしまう、という現象は、「俺は祖父の代から○○のサポだから、△△は嫌いだ」というだけでは生じない。「△△は嫌いだ」が前提となって、その「△△」を嫌う理由をとにかくたくさん集めたいときに生じる。ひとりが「なんだあのプレイヤーは□□のくせに、クソ」と悪態をついてる分にはガス抜き的なものに過ぎないのだけれども、スタジアムで多くの人々がそう叫んでいるとか、タブロイドがそう書いているとかいったふうに、個人を超えた状況として用意されると、「ガス抜き」とか言っていられないことになりうる。

ピッチ上のプレイヤーはプレイヤーでしかない。そこに「イズム」をかぶせるのは、ピッチにいない観客やメディアだ。フットボールをめぐるあれこれってのは、そういうことをはっきりと示してくれるひとつの媒体だと思う。

"In five, six, seven years I'll be retired, and I want to be able to watch football on TV or attend a match and not hear a single racist insult," he says. "That's what I'd like to do for future generations of players. And that's what I'd like to give back to the game that has done so much for me."
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「5年、6年、7年経てば僕は現役を退いているだろう。そうなったときにテレビやスタジアムで観戦するときに一言たりとも人種差別的な侮辱の言葉を聞くことがない、というふうになっていてもらいたい。これからの世代のプレイヤーたちのために僕がやりたいのはそういうことだ。僕にこれほど多くを与えてくれた競技に、こういう形で恩返しをしたい。」(ティエリ・アンリ)
posted by nofrills at 05:52| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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