2006年07月24日

避難する途中でミサイルを食らった白いヴァン(レバノン南部)

イスラエルのミサイルが、避難途中のレバノンの一般市民の車を標的として撃ち、車に乗っていた3人が死亡、16人が負傷した現場に、たまたま、別の現場に向かう途中のガーディアンの取材チームが遭遇したとのこと。

Blasted by a missile on the road to safety
Suzanne Goldenberg in Kafra, Lebanon
Monday July 24, 2006
The Guardian
http://www.guardian.co.uk/syria/story/0,,1827422,00.html

ガーディアンがたまたま通ったからガーディアンが記事にしている。通りかかったのが別の新聞の取材班でもそうしただろう。というか、西側のメディアが通りかかってなかったら、伝えられることもなかったに違いない。

なお、これとは別に、小林恭子さんのブログにロバート・フィスク@ベイルートのジャーナルが。いかにインフラから破壊されていくか。私は具体的に何もできないのであれば、せめて記録し、記憶しなければ。記事の内容がわかる程度にざっと。

救急隊員がアリに与えた仕事は、母親を死なさないようにすることだった。12歳のアリは、自分にできることをした。「お母さん、お母さん、寝ちゃダメだってば。」アリはすすり泣き、母親の顔を優しくたたいた。黒いベールの下で、母親のまぶたはゆっくりと下がってゆく。「もうダメだわ」と嘆息する。「そんなこと言わないでよ、お母さん」とアリは言い、そして泣き崩れる。
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歩道の上、母子の周囲には、シャイタ家の人々がいる。みなの顔に、互いの血がついている。そしてみなそれぞれに、ショック状態にあり、負傷している。アリの母親の腕には止血帯が巻かれている。数メートル先に、アリの叔母がぴくりともせず横たわっている。アバヤの下の白いTシャツは、血で真っ赤に染まっている。2人の妹は固く抱き合って泣いている。傷の手当てをしている救命士にも気づかずに。「わたしも一緒に行かせて、わたしも一緒に」とひとりが叫ぶ。
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母親がストレッチャーに乗せられ、救急車内に運び込まれる。「お母さん、神さまがついておられるから」とアリが言う。母親は動くほうの手を上げ、アリの顔を優しくなでる。
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昨日出発したとき、シャイタ家の人々は、安全な場所へ向かっているのだと思っていた。村の場所の地理的な偶然によって――イスラエルとの国境から5マイルの位置だった――彼らの故郷は殺戮の地と化すように思われた。そして彼らはイスラエルによって退去を命令された。
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しかし彼らの車は少し遅く、レバノン南部のイスラエルの空爆を逃れるほかの車とはぐれてしまった。別の街で負傷した一般市民のもとへ向かう救急車を追うガーディアンの車がその地点に到着する数分前、イスラエルのミサイルがシャイタ家の白いヴァンの屋根を貫いた。3列目に座っていた3人が即死だった。この中にはアリの祖母もいる。そして乗っていた16人が負傷した。
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この数日、イスラエルの空爆と、地上戦を控えて一般市民を辺りから退去させようという取り組みの矛先は、シャイタ家のような家族に向けられている。家を出てリタニ川の北に逃げるようにとのイスラエルの示した期限の1日前、ふだんはタバコ畑とバナナの木々の中をのんびりとゆくような道路が、死のハイウェイと化したのである。
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遠くで黒い煙がもうもうと上がっているが、私たちの前の道路は、危険はもっと近いところにあることを示している。イスラエルの攻撃を受けてまだ煙を上げている車の残骸、そしてリアウィンドウが粉砕された車。それらの一部はイスラエルの戦闘機に直接撃たれている。あるいは運転手が車を制御できなかったというものもある。頭上にはイスラエルの戦闘機の恐ろしい轟音と、すべての動きを追跡する無人偵察機のうなりが響いている。
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イスラエルの空爆で、海岸沿いの幹線道路の橋が断たれていて、第2の選択肢である山沿いの道は穴だらけでは、イスラエルの命令に従おうとするレバノン人の脱出の手段は限られている。「海岸道路に通じる小さな道はすべて破壊されています」と、国境の町ナクラの国連スポークスマンは述べた。「ロケット弾や爆弾で道路がひどい状態になっている箇所もあります。そういうところでは車から降りて押さないとどうにも動けない。」昨日の午後までには、多くの村人にとっては、ほんとうに脱出できる道などなくなっていた。
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(今日の)午前10時を回ったころ、家から9マイルほどのカフラという場所で、シャイタ家に死神が荒々しく訪れた。イスラエルの対戦車砲のかたちを取って。頭上のイスラエルのヘリから発射されたものらしい。ヴァンに乗っていた人たちのなかで、死んだり、焼ける金属の破片で負傷したりしていなかった人は、車が道を逸れてがけに衝突したときに負傷した。
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故郷のエト=ティリ村では、シャイタ家は親類縁者合わせて54人の大きな一族だった。その54人にあった車は3台。航空機からビラがまかれ、イスラエルからの退去命令が出された当初は、彼らは居残るつもりだった。「わたしたちは、自分の家で自分の生活を送っていたのですから」と、アリの叔父にあたるムスバハ・シャイタは言う。
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レバノン南部の12の村の人々にイスラエルが出した退去命令の期限は、土曜日の午後7時までだった。そのころにはシャイタ家の人々はパニックに近い状態になっていた。「走れる者はみな走っていました」とシャイタ氏は言う。「私は背中を押して行かせました。」
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逃げていく隣人たちのひとりが、移動手段を手配するから、と言った。そして翌朝、シャイタ家の54人全員が、3台の白いミニヴァンに乗って列を組んで出発した。その車を選んだことが致命的なミスとなった。
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イスラエル側がまいたビラには、ミニヴァンやトラック、バイクは標的と見なすと繰り返し書かれていた。「ミニヴァンはイスラエルにとって標的です。なぜならヒズボラのロケットを載せることができるので。イスラエル軍はじっくり考えてから動くわけではありません。単に、撃つのです」と、国連職員は述べている。
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イスラエルのF-16戦闘機や攻撃ヘリが、ヒズボラのロケット砲の供給をカットし戦士の移動を封じることを目的とした作戦を強めるにつれ、ほかにも数十人が、シャイタ家と同様の運命に見舞われている。
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しかしイスラエルの攻撃は、レバノン南部のずっと広い地域一帯で感じられている。Tyreのレバノン赤十字社では、昨日、一般市民を乗せた車10台と、3〜4台のバイクが、イスラエルのミサイルに撃たれていると述べている。赤十字の救急車も、同様に、安全ではない。スポークスマンのひとりが、南部の都市エル=クレイユの村の近くで、救急車がかろうじてミサイルを逃れるという事態があったと述べている。シャイタ家の3人を含む相当数の死者が車に閉じ込められたままになっている。死体を回収することがあまりに危険すぎるためだ。
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Tyreはレバノン南部の主要都市で、北部に向かう飛行機の中継地であるが、病院には間断なく負傷者が運び込まれている。午後遅くまでには、死者3人と負傷者41人が運び込まれ、負傷者のうちの2人は重篤な容態である。「車ごと爆撃しているのです」とジャバル・アル=アマル病院のアハメド・ムロウ院長は言う。
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脱出しないことを選択した人たちは――国連の推定では、村人の35〜40パーセントが、脱出できるほどお金がなかったり、または健康状態が悪かったりしている――まったく行き場を失ってしまっている。
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ムスバハ・シャイタが逃げるべきだと主張したとき、シャイタ家の人々はそのような問題を抱えていた。病院へ向かう車の中で、彼の耳は電話にぴったりと当てられていた。負傷した親戚たちがどこにいるかを確認しようとしていたのだ。彼は自分を責め続けている。
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「白旗を掲げていたのに。イスラエルの指示通りにしたのに。これ以上、何をどうしろというんだ?」

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オンライン署名:
http://0000000000.net/p-navi/info/column/200607240303.htm
http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_40e1.html

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レバノンからは「外国人」たちが引き上げている。P-navi infoさんが、「映画『ホテル・ルワンダ』で、ルワンダの孤児たちが孤児院の修道女と共にホテルに逃げてくるが、内戦の地から逃げるためのバスには西洋人の修道女だけしか乗せてもらえなかったシーン」が頭に浮かんだと書いておられるのを読んで、私もこの映画のことを思い出した。

映画のそのシーンでは、子供たちをしっかりと抱きしめるシスターやNGOワーカーが、無理やりのようにしてバスに乗せられる。(米国人ジャーナリストのジャックも、何度も振り返りながらバスに乗る。)篠突く雨の向こう、ホテルに残されたルワンダ人たちを捕らえるカメラの中央に、「主人公」のポールが立っている。走り去ろうとしているバスの中では、外国人たちが窓に張り付くようにして、ルワンダの人々を見つめている。外国人が去ったあと、映画『ホテル・ルワンダ』では、「如才ないホテルマン」のポールの機転とベルギーへの電話作戦で、危機は打開されてゆく。ポールの声には届く先があって、それが彼らを取り巻く状況を動かした。この『ホテル・ルワンダ』は実話を基にしている映画である。

しかし、レバノンのことを報道などで知り、某所やら某所やらで「私たちは自衛しているのだ!」という90パーセントのイスラエル人の中の数人の書いていることを読んで(←リンク先はその他の10%についての記事)、私が「似ている」と思うのは、『ホテル・ルワンダ』ではない。むしろ『モンティ・パイソン』だ。ポール・ルセサバギナはそこにはいない。

http://youtube.com/watch?v=w-xfNtB84kY
http://www.ibras.dk/montypython/episode21.htm#8

※日本語字幕がないので一応説明。ものものしいナレーションがついたこの“ドキュメンタリー”で、ハンターのロイとハンクがマシンガンやらバズーカやらで派手にどっかんどっかんやっている標的は、「蚊(mosquito)」である。それもごく一般的な。

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はい、しんどいです。疲れてます。あまりに複雑なので、こういう単純な黒いお笑いがほしいのです。

でも、複雑だからって、「難しいわよねぇ」「わたしにはさっぱりわかりません」と諦めてしまうことは、その只中にある人たち(both sides)に対して、とても失礼なことだと思うんで。
posted by nofrills at 16:28| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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