2006年07月31日

"The IRA regrets the suffering of all the families whose loved ones were killed and buried by the IRA."

1つ前の記事で、北アイルランドについて「peace before justiceではあっても、peace without justiceではなかったはず」と書いたのだけれど、その関連。

ナショナリスト/リパブリカン側(おもにIRA)も、ユニオニスト/ロイヤリスト側(UDA、UVFなど)も、彼らの動機が政治的なものであったということから、その罪を法的にあがなわなくてもよいことになっている。それがグッドフライデー合意だ。せいぜいが、「あの時はあなたの家族を殺して申し訳ないことをしたと思っている」と言うだけ。

最も近いところではこれか。
IRA insists victim was informer(←この見出しも意図がありすぎだが)
Last Updated: Saturday, 8 July 2006, 15:23 GMT 16:23 UK
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/5160966.stm1972年12月、ナショナリストのエリアに住む10人の子の母親が行方不明になった。彼女は夫を亡くし、女手ひとつで、育ち盛りの子供たちの面倒を見ていた。子供たちは突然母親を失った。そのエリアを実効支配していたIRAは、「彼女は英軍兵士と駆け落ちした」との説をばらまいた。

しかし実際には、そのIRAが彼女を拉致し、拷問し、殺し、埋めていた。彼女が拉致されたのは、IRAとの戦闘で重い傷を負った英軍兵士を手当てしていたかららしい。つまりIRAは、彼女のことを、英軍への情報提供者であると決め付けていたわけだ。

その背景には、この女性が元々はプロテスタントだったことも影響している。The Troublesと呼ばれる紛争が始まる5年ほど前、彼女はカトリックと結婚したときにカトリックに改宗していた。

つまり、彼女が結婚してから5年ほどあとに激化したセクタリアンな対立と暴力の中で、彼女の「出自」が疑惑を呼んだ、ということだ。

彼女の遺体は、失踪から30年以上経った2003年9月に、やっと発見された。(この女性について、詳しくはこちらなど。)

彼女のような形で失踪し、殺され、埋められたのは彼女だけではない。BBCによると9人だという。彼らはthe Disappearedと大文字で呼ばれている。日本語にすればさしずめ「特定失踪者」だろう。

で、今年の7月に、IRAが、そのような形で拉致し、殺し、埋めた人々について、その遺体の扱いが「間違っていた」と、シン・フェイン(IRAの政治部門)のトップが述べた、というのが、次のBBC記事だ。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/5170594.stm

ジェリー・アダムズがそう述べる数日前、8日(土)に、IRAの声明(P O'Neil署名)が出されている。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/5160966.stm

そこにはこんなふうにある。
"The IRA regrets the suffering of all the families whose loved ones were killed and buried by the IRA."


IRAの「ご家族を殺してしまい、申し訳ないことをしたと思っている」という「後悔」声明の基本の形は、"The IRA regrets the suffering of all the families whose loved ones were killed by the IRA."である。(regretであってsorryではないことに注意。)

この基本の形に付け加えられたand buriedの2語によって、全体がいかに陰惨さを増していることか。

で、問題は、この陰惨さが人々の眉をひそめさせることはあっても、法的には特に何ということでもない、ということだ。

北アイルランドにおいて、「犠牲者」を名乗るのは、多くが「リパブリカンの暴力の犠牲となったプロテスタント」たちだ。彼らの運営する情報サイトなどを見ると、「私たちはヒズボラのロケットで被害を受けている」と絶叫するイスラエルとそっくりの論法なのだが(ついでに言えば「メディアはいつもハマスやヒズボラの味方だ」と言い募るさまは、「労働党政権はいつもシン・フェインの味方だ」と言い募るさまに似ている)、実際にはプロテスタントは常に被害者であったわけではない。IRAが無差別爆弾テロを行なったように、UDAも無差別爆弾テロを行い(<映画『プルートで朝食を』にも出てきてた)、IRAもUDA(またその他のパラミリタリー)も等しく、拉致・誘拐、狙撃、暗殺、監禁、拷問などを行なってきた。

そういったことが、「過去を過去にする」ために、水に流されるばかりか、そのperpetratorたちが機能するシステムの一部となることが前提されている。

繰り返すけど、IRAだけじゃない。UDAもUVFも、あるいはもっと大きなものを背後に背負った英軍や英諜報機関、そして警察も、すべてが当事者であった、それがthe Troublesだ。

それを、本当に終わらせるために、どういうことが行なわれ、語られるのか。うちら、それをリアルタイムで見ている。

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コメント&トラバは
http://nofrills.seesaa.net/article/21708753.html
まで。
posted by nofrills at 15:02| todays_news_from_uk/northern_ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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