2004年01月22日

原作との異同について〜翻訳P

mark.jpg シンボルマーク:ぴぴさん

http://nofrills.hp.infoseek.co.jp/hon/story.htmlにあるThe Two Brother Sparrows in Waqland: a fableについて,原作の『二本山の兄弟犬』との異同をまとめます。■「犬」→「スズメ」「ウズラ」など鳥にしました:
イスラームの文化圏では「犬」は忌み嫌われる動物です。“人間に近い存在”ではありません。(過去記事)そのため,仮原稿の段階では「猫」を使いました。原作者のDoXさんも「猫でいいんじゃないかと思う」とコメントをくださいました。

ただし登場するすべての動物が「猫」だと,寓話性が浮かび上がらないという問題点がありました。そこで,イスラームの文化圏では寓話では鳥がよく出てくるという情報(ことしゃんより)を参考にしつつ,アラブの民話(英語になっているもの)をネットでいくつか読み,最終的に「鳥」にすることにしました。それでもすべて「鳥」では寓意が引き出せないので,具体的な名称として,普通にいる鳥の代表ということで,「スズメ sparrow」と「ウズラ partridge」を使いました。

なお,当初は国鳥を使う案がありましたが,それはシンボリックになりすぎるきらいがあるので,より一般化してみました。イラクの国鳥は「イワシャコrock partridge」ですので,それを一般化してpartridgeに,日本の国鳥は「キジpheasant」(ほんとは種目名)ですが,それはそれ以上一般化できないので,うちの近所にもいる「スズメ」を使いました。

これら一連のことは,「寓話」としての効果をストレートに出すための処理です。

■「地名」の変更:
「二本山」→Waqland (アラビアン・ナイトで日本のことがWaqwaqなどと表されているとのことで)
「茨草」→Crescentia (「三日月地帯」。チグリスとユーフラテスの間のことも表す意味で。これはある方がメールでヒントをくださいました)
「雨山」→Megaland (「大国」……そのまんま。抽象的にしたかったので)

■内容のリライト:これが最重要です
#話が長くなりますが,ご容赦。

英語版は原作の逐語訳にはなっていません。

これについてはさんざん悩みました。考えました。できる限りの情報を仕入れて考えに考えました。その結果,原作とは大きく違って見えます。(「見える」だけで本質は変えていないと私は信じています。)

まず,私は『二本山』をDoXさんのblogという大きな文脈で見ており,それ単体で見たわけではない。さらに,『二本山』のみに感銘を受けたわけではない。

私が英語にすると言い出した動機は,どこかに書きましたが,DoXさんの書いたものを11月下旬からずっと読んできたからこその話です。いきなり『二本山』だけを読んでいたら違ったことを考えていたでしょう。

とか冷静に書いているようですが,ネット上でいくつか『二本山』について疑問を呈する風合い(←これは私の印象です)の感想を読み,では自分はなぜこれをやっているのかを,英語版完成までの1ヶ月強,ずっと考えていました。自分の判断を一度は否定することが必要でしたし(ひとりディベート),頭の中はすごいことになっています。

その上で,物語としての上っ面を英語にすることではなく,本質を英語にすることを試みました。イラクで言われているあれこれを可能な範囲で読み,占領軍側のおためごかしも可能な限りは読みました。その結果,言葉として同じになっている部分を大幅に変更しました。(私は「言葉は意味に貼られたレッテルである」を信じています。何かを伝えたい場合に単なる言葉の置き換えではうまく行かない場合もあり,その場合には一段階次元を変える必要があると思っています。)改変の根拠は,DoXさんの書いたもの全体です。

ここまでの作業は,12月末に仕上げていた仮原稿である程度終わっていました。その仮原稿で大きく改変した部分は,英語から日本語にして原作者にメールで連絡をし,その線でよいという許可をいただきました。

具体的には……「二本山の兵隊をねらわないでください」の部分の色を,原作に比べて薄くしました。「できたら雨山の兵隊もねらわないでください」も表に出しませんでした。ものすごく悩みましたが,「どう見えるのか」を考え,最終的にその判断を下しました。彼らと同じ言葉を使うことは私にはできない。それでDoXさんの思いが伝わるとは思わないからです。

『二本山』は,読みこめば読みこむほど,日本の内政についての物語であると私には読めました。二本山と雨山,二本山と茨草の関係は出てきますが,いずれも二国間の話です。これを英語にすることにどんな意味があるのか。「二本山についての説明」にはなりますが,茨草から見れば「だから何だ」でもあるでしょう。

原作者のDoXさんは,『誰がテロリストになっているのだろう』を『二本山』の前に書いておられます。私はここにある視点を取り入れることが最善と考えました。

ここまでは,12月末にアップした仮原稿である程度終了していましたが,詰めの作業まではできていませんでした。自分で書いたものを自分で検証することは根本的にやはり無理で,英文チェックの段階でいただいたコメントを元に,いろんなニュースサイトを見て回って,さらにある程度の時間を置くことで自己と距離を取って,その詰めの作業を行いました。

その後さらに最終作業として,原作のうちで日本の人が読むべき箇所と判断されたところは,割愛するなりまとめるなりしました。同時にこの記事の上に書いたような,動物名の差し替えなどを行いました。

その結果が昨日アップした英語版です。

というわけで,英語版は原作とはかなり違うように見える部分があるはずです。

その結果,「これは『二本山の兄弟犬』ではない」と思われる方もいらっしゃると思います。

■追記(2月2日)
上に書いたことのほかにもいくつか原作から変えていることがありますが,全部ははっきり覚えていないので書ききれません。わからないことがあれば「コメント」欄でご質問いただけますと幸いです。よろしくお願いします。
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