2005年10月28日

最近の北アイルランド

今週のニュースからいくつか,メモしておきたいものを。

1)ジョージ・ベスト
ベルファストで生まれ育ったサッカーの「伝説」,ジョージ・ベストが集中治療室で意識不明の状態になっているということについては,1つ前の記事を参照。

2)ユニオニストの壁画
UVFとかRHCとかの「覆面にライフルな男たちとシンボル」の壁画に代わって,ユニオニスト/ロイヤリストの壁画に登場するのは,C.S.ルイスやジョージ・ベスト。
http://observer.guardian.co.uk/uk_news/story/0,6903,1598829,00.html2003年に描かれたC.S.ルイスの壁画の写真がCAINにある。
http://cain.ulst.ac.uk/mccormick/photos/no1919.htm#photo
この壁には,以前はRHCのクレストと武装した人物が描かれていたという。CAINデータベースには,同時期に描かれたルイスの壁画が3点。

ただ単に「郷土の偉人」を記念する壁画ならよいのだが,そして壁画を作った人たちの思いは「郷土の偉人を記念」と「暴力はやめようのメッセージ」であることを私は信じているが,しかしこのオブザーヴァー記事には引っかかりを覚える。

A mural dedicated to Lewis's legacy and Ulster roots has replaced another that once celebrated the exploits of armed loyalist paramilitaries. The move to 'de-militarise' the walls of Protestant East Belfast has also seen murals praising the UVF erased and replaced with ones highlighting the local roots of Northern Irish soccer stars such as George Best, Derek Dougan and Sammy McIlroy. Other 'de-militarised' walls in the area include one now with a mural recalling Alamo hero Davy Crockett's Ulster origins.


要するに,「パラミリタリーばんざい」的な図柄を消すために,文化・スポーツ分野が選ばれた,という“平和的”な動きだ,という方向で,ヘンリー・マクドナルドは解説しているのだが,どうなんだろうね。結局,C.S.ルイスという才能のすばらしさを,「アルスター・プロテスタントのすばらしさ」に読み替える試みがなされているということでしょ。

記事の中で語っている学者は,例えば,ルイスがいかに北アイルランドの風土を愛していたかを述べているが,ルイスが山や丘を愛していたからといって,それが「アルスター・プロテスタント」と関係あるのか? 幼少期に親しんだ風景を大切に思うことが,「アルスター・プロテスタント」のために強調されるべきか? 「あの偉大なC.S.ルイスはアルスター・プロテスタントだった」という“神話”を作りたいのか?

そんなことより,パラミリタリー自体を何とかしろよ。セクタリアン・ヴァイオレンスは壁画であおられることはあっても,壁画でとまることはないだろう。

'It's so important for them to realise that their community has produced so many world famous sportsmen or authors like CS Lewis. This will instil a new sense of pride in a community that has been down for so long, and told that it has contributed next to nothing for the world.' Lord Laird, the chairman of the Ulster Scots Agency, the organisation behind the cultural initiative, said he hoped the renewed interest in CS Lewis would remind not only Northern Ireland but the planet at large about the impact some of Ulster's 'exports' made on the world.


つまり「ルイスはone of usだ」という点に着目しているというんだが,ルイスについての「アルスター・プロテスタントのルーツ」の強調が,何に益するというんだろう。(映画の興行収入がアップするかもという話はちょっと別次元として。。。というかそれが目的なら,映画の宣伝にすればいいのだ,政治的な宣伝ではなく。)

まったく,濃度として半分くらい読んだらげっぷの出る記事だ。

C. S. Lewisは20世紀初頭,10歳にもならないうちにイングランドに移った。そして長じて無神論者になった。「アルスターのプロテスタントであることを誇りに思い……」みたいな態度とは無縁であったはずだ。第一,アルスターの宗教的な事情を知らなくたって,『ナルニア国』はおもしろいと思えるだろう。

つまりね,彼らのやろうとしていることは,「すばらしいものは我々のものとして誇示」であり,一方で見苦しいものは塗りつぶすってことじゃないかと思うわけです。

壁画を塗りつぶしたところで,パラミリタリーはそこにいるのに。

3)リパブリカンに殺されたカトリックの人の友人
殺害されたロバート・マッカートニーと一緒にいて,あの事件のときに殴られた友人が,IRAから脅されているらしい。IRAは「すべての活動を停止する」と宣言してて,その曖昧さがユニオニスト側からかなりの批判を浴び,一方でシン・フェインは「すべてと言ったらすべてなんです,これ以上具体的にしようがないじゃないですか」というような反論をしていたけれども,やっぱり活動中なんでしょうか。
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,2763,1597178,00.html

4)テロの犠牲者
1981年にINLAメンバーに射殺された警官の妻が,victim's commissionerに。
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,2763,1599995,00.html
While unionists welcomed the appointment, Sinn Fein said Mrs McDougall must show she can empathise with all victims, including victims of "state killings".


この人選でまた「対立」? それでも確実に,事態は同じであることをやめていると思いたいけれども,ブラッディ・サンデーの最終報告書も出てない(予定では9月だったのに)段階では何とも言えない。

5)UDAの武器はどうなる
'Call it a day', loyalists urged
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4367194.stm

UUPが「IRAが武器を捨てたのだからロイヤリスト側パラミリタリーも」と呼びかけた。それを受けてなのかな,UDAとIICDの会合。

UDA meets decommissioning body
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4383760.stm

UDAからはAndre ShoukriらがIICDとの会合に出席。UDAは武器の放棄には応じていない。BBCに詳しい情報はない。

6)オレンジホール襲撃
窓が割られて火炎瓶が投げ込まれた。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/4384970.stm

7)シン・フェイン
Government lifts financial sanctions on Sinn Fein
Thursday October 20, 2005(←1週間以上前)
http://www.guardian.co.uk/Northern_Ireland/Story/0,2763,1596049,00.html
posted by nofrills at 21:32| todays_news_from_uk/northern_ireland | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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