2006年06月28日

フットボールのかげでものすごい対決が――パックスマン対クールター!

スラオさん経由で今日知ったのだが、20日にBBCのNewsnightでものすごい対決が行われていた。

スタジオのジェレミー・パックスマンが、衛星回線で対峙したのは、あのアン・クールター。

導入部(アン・クールターの人物紹介)から対決まで、全部で7分半ほど。
http://www.youtube.com/watch?v=4aiHbUplz3k非常に簡単に言えば、アン・クールターは「アメ保守のバービーあるいはパリス・ヒルトン」で、ブロンドでスリムな美女。ルックスだけ見てると、通販番組でトレッドミルとか特別のシャンプーとかシワ取りクリームとかを紹介している、年齢のわりには若く見えるおばさんのような人だ。でもこの美人、石原慎太郎も裸足で逃げ出すんじゃないかというくらいに「過激」。彼女が「リベラル」と見なした人物や考え方はすべてたたく。徹底的にたたく。しかも根拠が「私の意見は多くの人に支持されているのだから」。まったく、考え方といい、ルックスといい、ポピュリストの見本だ。

一方のジェレミー・パックスマンはBBCの名物、相手が政治家となるとファイティング・スピリットが倍増、鋭いツッコミを入れまくることで知られる。ただしその「鋭いツッコミ」の質や内容はさまざまで、「ツッコミのためのツッコミ」になることもある。

さて、この両者の対決、本気でやればポルトガル対オランダ並みの事態になりそうなものだし、普通にやってもスイス対ウクライナ並みの内容は期待される。

が、実際には、パックスマンはクールターにしゃべりたいだけしゃべらせて、「あとは視聴者のみなさんが判断してください」というような戦略をとった。

BBCのエディターのblogからリンクされているEC 1 Cruise Controlというblogは、パックスマンのこの戦略を「1−0で負け」と判定している。

確かに、導入部で「クールターは言う、『問うべきは、すべてのムスリムがテロリストなのか、ではない。すべてのテロリストがムスリムなのか、である』。ジェリー・アダムズならどう答えるだろうか」(<ネタバレ回避策を施してあります)と、あさっての方に入れているツッコミの鋭さは、対決本編では見られない。

もったいないことを。

アン・クールターみたいなのは、「あのBBCであのパックスマンを相手に」を勲章みたいに騒ぎ立てるに決まってるじゃないか。(アメリカで「BBCのパックスマン」が知られていないことはさておき。)

パックスマンはゴージャス・ジョージにしつっこく絡んだときのように、同じことを何度も問い、ねちねちとツッコミを入れるべきだった。だってアン・クールターはこんだけしゃべってるのに何も言ってない。おそろしいほどの論理の不在。しかし、彼女に何か言わせ、それをたたかなければ「対決」の意味がない。

残念なことに、おかしな発言を「見世物」として展示すればメディアの役割は終わり、という牧歌的な時代ではなくなっているのだから。

まさにメディアのそういう態度こそを、クールターのような人々は、「リベラル」のものとして否定している。ツッコミ屋が自分から進んでツッコミ材料を提供してどうする。

5年前なら、クールターのおかしな発言は、嘲笑の対象にしていればよかったのかもしれないけれど、今はそれでさえ、まともに相手にしていかなければならなくなっている。パックスマンがそのことに自覚的であるかないか(それを自覚した上であえてああいうふうにしたのか)まではわからないけれど、少なくとも、枠に行くシュートの1本や2本は欲しいところじゃないか。
posted by nofrills at 09:47| todays_news_from_uk | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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